TORIENA(読み方 : トリエナ)
HP : http://toriena.net/
Twitter : https://twitter.com/toriena
Facebook : https://www.facebook.com/toriena321
Instagram : https://www.instagram.com/toriena/
LINEBLOG : https://lineblog.me/toriena/
Soundcloud : https://soundcloud.com/toriena
皆さんは「チップチューン」という言葉をご存知だろうか?このジャンルを辞書的に語るなら、テクノポップから派生し、ゲームボーイに搭載されていた音源チップを元に奏でられる音楽ジャンルだ。サウンドを擬音的に表すなら「ピコピコ」がそれに近いだろうか。近年、認知を拡大しているこのシーンにおいて、2012年より活動し、今その名を轟かしている女性クリエイターが存在する。それが、今回ご紹介するTORIENAだ。
改めてご紹介すると、TORIENAは2012年、京都は立命館大学在学中より活動を開始した女性チップチューンクリエイター。作詞・作曲・編曲・アートワーク・ヴォーカルを全てセルフプロデュースで行う彼女。ゲームボーイとDTMを掛け合わせた激しさとポップさを兼ね備えたサウンドで、チップチューンシーンは元より、近年ジャンルを飛び越えて活動を行なっている。
そんなTORIENAだが、2018年10月に自身のレーベルMADMILKEY RECORDSより、初の全国流通作となる新作フルアルバム『SIXTHSENSE RIOT』をリリースした。彼女の言葉を借りるなら、「満を時して」リリースされた本作。従来TORIENAが培ってきたチップチューン的アプローチは元より、他ジャンルとの融合要素や今まで見せなかった彼女の感情……喜怒哀楽が収録され、ネクストステージに駆け上がった印象が見受けられる。
今回、『SIXTHSENSE RIOT』にまつわる逸話は勿論、彼女の事を改めて掘り下げるべく、生い立ちからルーツ、チップチューンとの出会い、思考法等を伺うべく、怒濤の1万字超えインタビューを実施した。
取材・文 / 宮久保仁貴 編集 / 松江佑太郎
–まずは、このメディア初登場ですので、TORIENAさんの自己紹介をお願い致します。
TORIENA : チップチューンアーティストのTORIENAです。作詞・作曲・編曲・アートディレクションなど、セルフプロデュースで色々やっています。
–TORIENAさんは幼少期はどのようなことをして過ごされたのでしょうか?
TORIENA : 親が音楽好きだったんです。特に父はルーツレゲエやR&Bが好きで。家に大きなスピーカー2発と、アナログターンテーブルやミキサーがあって、音楽を聴くスペースみたいなものがあったりしていて。なので、結構良い音で音楽を聴いたりしていました。あと、3歳ぐらいの時からバレエを習っていて、音に合わせて踊ったりするのもすごく好きでした。
–幼少期から音楽的に恵まれた環境だったんですね!ちなみに、TORIENAさんが初めて購入されたCDはどなたの物だったのでしょうか?
TORIENA : アメリカのポップアイドルのHilary Duffのものでしたね。それが小学校5年生ぐらいだったかな……でも、どちらかというと、元々電子音楽みたいなやつが好きでしたね。当時はバンド音楽が流行っていて、それも一応聴いてはいたけど、それよりかはDAFT PUNK、KRAFTWERKとか、あのあたりがカッコいいと思ってました。ちょっとエレクトロっぽい、電子音っぽい感じのものが好きで、中学校の時、POLYSICSに初めて出会いました。
–この時期から、今の音楽活動への片鱗が垣間見えますね!続きまして、TORIENAさんが初めて楽器等に触れたのはいつの頃になるのでしょうか?
TORIENA : 同じ時期あたりから吹奏楽をやっていたんですが、人が少なかったからチューバやコントラバス、エレキベースとかの低音系の楽器を一通りやりまして。
そして、個人的にベースギターを買って演奏し始めて……でもまだDTMとかは流行っていなかったので、どうやればいいのかとかも分からなくて。そういう訳で、バンドやりたいなと思いながら、1人で部屋でベース・マガジンとか読みながら、めっちゃテクいフレーズ……例えばJaco Pastoriusとかを練習して、「弾けない……。」みたいな事を繰り返していました(笑)。
–(笑)。そこから、TORIENAさんは今現在主戦場とされているチップチューンと出会われる訳ですが、こちらのきっかけを教えて下さい。世代としては、GB直撃世代では無いように思いますが。
TORIENA : まず、高校3年の時に、クラブとまではいかないような箱でテクノイベントがあって、たまたま友達に誘われて初めて行ったんですよ。そこで流れてくる音は、当然ヘッドフォンで聴くのと全然違う大きい音で、めちゃめちゃ衝撃を受けたんです。その時、「私はテクノを作るために生まれてきたんだ!」と思って(笑)!そこからテクノ作ろうということで、アルバイトしてCubase買ったんですけど……いざ触ってみたら、出来る範囲が広すぎて難しいなと思ったんです。
–なるほど。大学時代はどの様な生活を過ごされたのでしょうか?
TORIENA : その後大学でオリジナル楽曲を制作するサークルに入ったら、そこにテクノ好きな人が何人かいて。そのサークルの友達から、「チップチューンっていうのがあるんだけど知ってる?」って言われたんですけど、その時の私は全然知らなくて。チップチューンっていうものを自発的に知ったというよりかは、偶然にやり始めた感じでした。チップチューンのイベントをやっていたりしていた、cafe la siestaっていう京都のゲームバーに行って、いざ、「チップチューンやりたいんですけど、どうやってみんなやってるんですか?」と聞いたらカセットを貰って、「Little Sound Djっていうソフトなんだけど、これで曲作った人多いよ。」みたいに教えてもらって。
–ここで初めてチップチューンと出会われたのですね!
TORIENA : ただ、カセットをゲットしたのは良いんですけど、いざ触ってみたらめちゃくちゃ難しいんですよね。「ちょっとムズいな……。」と思って放置してたんですけど、ある時友達から「TORIENAちゃん、ライブ決まったよ。」っていきなり言われて。この日、共演者もU.S.KさんとかOmodakaさんとか、めちゃくちゃ豪華だったんで。「曲作ってないじゃん、作んなきゃ。」と思って……1曲作るんじゃなくて30分のミックスみたいなものを1つのカセットの中に作って、初めてライブしたんですけど、そのライブがすごく楽しくて……!そこから結局続けて……結局という言い方はアレなんですけど、気付いたらずっとやっています(笑)。
–TORIENAさんが活動を始められた頃、女性の方でこのジャンルに進出されていた方は少なかったですよね。
TORIENA : そうですね。それこそLittle Sound Djとか、チップチューンの曲を作る制作画面とかを見てもらったら分かると思うんですけど、作曲の仕方が結構プログラミングに近くて、すごく理系っぽいんですよね。だからか、クリエイター側としては中々取っ付きにくい一面もあるのかな、と思います。そんな前提があったからこそ、当時の私みたいに女の子で若い子ってあんまりいなくて。だから良くも悪くも目立つというか。
そういう意味で珍しがってもらって、ライブブッキングが増えたりとか注目してもらったりとか……そういう点はありがたかったですが、個人的にはすごくテクノが好きで、高校生の時に初めて箱で聴いた衝撃から、私は純粋にテクノをやりたいという気持ちがあったんです。作ったものを聴いてもらいたい欲求は勿論あり、そういう本質のところまでちゃんと届いているのかが気になりましたね。あと、「結局男の影響でしょ?」とか「すぐやめるでしょ。」みたいなことは言われたりしてて、それはまあムカつくんですけど(笑)。続けてれば本当に好きな気持ちは証明されるだろうと思って、「この野郎!」とか思いながら、頑張って続けてきました。最近は少しずつ、「本当に音楽好きでやってるんだな!」という事が人々に少しずつ伝わってきてるんじゃないかなと思うので、そういう感じで続けていきたいです。
–ちなみに、活動当初からDJシーンのみならず、TORIENAさんはその他ジャンルとの共演も多いですよね。
TORIENA : 確かに。例えばアイドルの方と共演する事もあるので、私自身アイドルと間違われることが結構多いんですけど、ステージに立つっていう側面では同じですが、アイドルの方とはまた違う職業を担っていると思っています。でもいろんな方と共演することは、1つの扉が増えている状態だと思うので……例えば人が音楽を聴くきっかけは沢山あるじゃないですか。ライブ見に行ったら曲が良かった結果、CD買ってみたとかもあると思うし。その一部として、パッと見のヴィジュアルイメージが良くて、ジャケ買いしたら実際良かったとか。そういう入り口が多い分には良いと思うので、わざと顔隠してやったりするのも違うなと思うし、どのシーンでやって、どう思われようが自分の世界観を全開にして行こうと思って活動してきました。
–アーティストにとって、どんな状況・場所で活動しようとも、本来一番意識すべき点ですよね。
TORIENA : ぶっちゃけ、ありのままをさらけ出せる場は普通に生きてたらあんまりないじゃないですか。ただ、表現において、それは自由だし、やっぱりそういう事が出来る人間がアーティストだと私は思います。
私は自分自身繊細な方だと思っていて、少しの事でも感情がすごく揺り動かされたり、すごく想像してしまったりだとか、そういうことが小さい時からありまして。生きにくいなと思っていたんです。でも、それを0から100まで人に全部伝えて共感し合いたい気持ちはあって。私も発信するし、聴いている人の思ってることも全部知りたいみたいな人間だったんですよ。ただ、思ったことを全部言うのは無理じゃないですか。でも、それが叶うのが表現だと思っていて。だからこそ、表現を通して、なるべくありのままの自分を曝け出していきたいなと……それこそがアーティストだし!と思います。
–そんなTORIENAさんが先述の音楽ジャンルもしかり、今現在に到るまで影響を受けてきた方・物事を教えて下さい。
TORIENA : 私は音楽だけじゃなくて、絵とか作品からもすごく影響されるタイプなんですよ。中でも、一番影響されてるのは水野純子さんというイラストレーター・漫画家さんですね。水野さんには、人生の見え方、ものの見え方を完全に変えられました。
音楽だと……難しいな。実は、音楽のアーティストで憧れてる人っていないんですよね、めちゃくちゃ生意気な話なんですけど。と言うのも、勿論様々なジャンルを幅広く聴いてきて、例えば「この曲カッコいい!」とかはあるんですけど、曲全体と言うよりは、「この曲の特にこの部分がカッコいい!」という形で。完全に自分自身の形にぴったりハマるっていうのが無くて……やっぱりそれはその人の作品、哲学じゃないですか。だからこそ、私の物の見方と完全に一致することはあんまり無いんですよね。その裏返しとして、ジャンル問わず、1曲1曲の好きな部分をかき集めて、自分のものにしたいということで、曲を作り始めた節があったので。
だから、憧れのアーティストがいて、というよりかは自分になりたくてやっているので、特定の憧れはあんまり無いですね。1ケ月誰かにめっちゃハマって聴くとかはあるんですけど、ずっと通してこの人が好きとかはあんまり……でも、チャイコフスキーとかは好きです(笑)。もともとバレエやってたから、懐かしい気持ちになります。
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