須田景凪(バルーン)、笹川真生、春野(豆腐屋)、YUUKI MIYAKE(MI8k) – ボカロの出自が変える音楽シーン vol.5

須田景凪(バルーン)、笹川真生、春野(豆腐屋)、YUUKI MIYAKE(MI8k) – ボカロの出自が変える音楽シーン vol.5

ここ数年の邦楽シーンを語るうえでのキーワードとなっている“ボカロP”。その“ボカロP”の魅力を伝えるとともに、邦楽シーンを追うために役立てるものにしようと企画された「ボカロの出自が変える音楽シーン」も早いこと今回で5回目。

既ににお気づきの方も多いだろうが、5回目を迎えてもなお紹介しきれていないアーティストが山ほどいる。並行して連載されている「多様化するバーチャルYouTuber – オリジナル曲を歌うVTuber」コラム同様、シーンの動向が早く、次々とボカロを出自に持つアーティストがデビューを飾り、メジャーシーンへどんどん台頭している。

PC環境とソフトさえあれば楽曲を制作して投稿できてしまうわけだから新たな才能が発見されやすいものである。いわば、次々と新たなアーティストが生まれる今は健全なものだと言えよう。

そして、黎明期には急速なBPMの曲やJ-POP的、J-ROCK的なものが多く存在していたボカロシーンも、今では最新洋楽シーンから影響受けたものから80年代シティポップからインスパイア受けたものまで、音楽ジャンルも多様化が進んでいる。

そのため今回はその多様化を象徴する、須田景凪(バルーン)、笹川真生、春野、YUUKI MIYAKE(MI8k)の4名をピックアップした。

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文・編集 / 滝田優樹(https://twitter.com/takita_funky)


【須田景凪】

2019年7月には中野サンプラザホール公演、最新作である2nd EP『porte』の収録曲「veil」がTVアニメ”炎炎ノ消防隊”のエンディング主題歌、「MOIL」が映画「二ノ国」主題歌として採用。来年2020年には全国7カ所、初の全国ツアーを控える。今最も勢いのある男性アーティストのひとり、須田 景凪。

そんな彼もシンガーソングライターとしての活動を行うよりも以前、2013年より“バルーン” 名義でボカロPとして活動をしている。ボカロPとしての人気も非常に高く「シャルル」、「雨とぺトラ」、「レディーレ」など数々の人気曲を生みだし、そらるや96猫らをはじめとする多くの人気歌い手からカバーされ、支持を受けている。なかでも「シャルル」はカラオケJOYSOUNDが発表した2019年上半期ランキングにて米津玄師「Lemon」、あいみょん「マリーゴールド」に次ぐ3位にランクイン。楽曲の発表から約3年が経過する今でも人気が高く、ボカロの人気を象徴するトピックとして話題を呼んだ。

“中毒性”で形容されることの多い須田 景凪の楽曲。急速なギター・ロックからスローなメロウ・ソウルまで多様なサウンドとリズムを引き出しに、高い熱量で飾らずに伸びやかに歌われるスタイルとがあいまって結果キャッチーな楽曲に仕上がっている。ド真ん中なポップ・ミュージックで聴きやすいけども、実はテクニカルなことをやっている。だからこそ、聴くたびにハマってしまう=“中毒性”に繋がる所以であろう。


【笹川真生】

ジェンダーレスな歌声と実験的、DIY的なエレクトロサウンドを基盤にオルタナ・ポップ~ドリーム・ポップ、ポスト・ロックを奏でる新進気鋭のアーティスト笹川真生。

ロック・バンド、文学少女のギター・ヴォーカルとして活動も行う笹川は、2012年より“豆腐屋”名義でボカロPとしてのキャリアをスタートさせた後に“なぎさ”名義で「人間失格」を投稿し、話題を集める。“mao sasagawa”に改名後は自身歌唱の楽曲も発表。今年9月には初のフィジカル、全国デビューアルバム『あたらしいからだ』をリリースした。

触れると壊れてしまうような繊細さを含み、危険な匂いを感じるサウンド。時にグロテスクに時に優しく歌われるボーカル。そのふたつの要素が織りなすハーモニーは全てを許容する包容力となり人々の胸に突き刺さる。ベネズエラ出身ロンドン在住の奇才アルカを彷彿させる前衛的な楽曲アプローチは、ボカロP出身アーティストでは特異的だといえるだろう。笹川真生の登場は新時代の幕開けとなりうるかもしれない。

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