Яyo(Wolves anchor DC、ex. ギルガメッシュ/Dr)対談 / EXTENSION vol.2 -克哉(SLOTHREAT/Misanthropist)の異分子のすゝめ 特別編

Яyo(Wolves anchor DC、ex. ギルガメッシュ/Dr)対談 / EXTENSION vol.2 -克哉(SLOTHREAT/Misanthropist)の異分子のすゝめ 特別編

普段は克哉(SLOTHREAT/Misanthropist)個人のコラム「異分子のすゝめ」として掲載されている本コラム。

前回の『EXTENSION vol.1』に引き続き、Яyo(ex. ギルガメッシュ/Dr)を迎えた対談形式でお送りする。

元々ギルガメッシュのファンでもあった克哉はЯyoと師弟関係にあり、互いにリスペクトし合ったからこそ築き上げられた仲の良さを感じられる。技術の発展と共に常に変動し続ける音楽シーンの中で共に成長する仲間として支え合える関係は、間違い無く彼らの強みだ。

今回は、二人の出会いのきっかけやエンジニアとしての音楽に対する考え方について、そして克哉自身のバンドSLOTHREATが所属し、Яyoがレーベルヘッドとして始動するレーベル『Wolves anchor DC』に焦点を当てた対談をお送りする。

取材・文 / 宮久保仁貴(https://twitter.com/hermanhalkemen ) 編集 / 新倉宏則

関連 : EXTENSION vol.1 -克哉(SLOTHREAT/Misanthropist)の異分子のすゝめ 特別編/DIMLIM 烈(Gt)、セラ(Neko Hacker)対談
https://toppamedia.com/column-katsuya-ibunshi-no-susume-extension-vol1/

関連 : 克哉(SLOTHREAT/Misanthropist)の異分子のすゝめ Vol.4
https://toppamedia.com/column-katsuya-ibunshi-no-susume-vol4/

関連 : 克哉(SLOTHREAT/Misanthropist)の異分子のすゝめ Vol.3
https://toppamedia.com/column-katsuya-ibunshi-no-susume-vol3/

関連 : 克哉(SLOTHREAT/Misanthropist)の異分子のすゝめ Vol.2
https://toppamedia.com/column-katsuya-ibunshi-no-susume-vol2/

関連 : 克哉(SLOTHREAT/Misanthropist)の異分子のすゝめ Vol.1
https://toppamedia.com/column-katsuya-ibunshi-no-susume-vol1/


 

-改めて、師弟関係にあるお二人ですがまず出会いのきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

 

Яyo : 元々は愁(ex. ギルガメッシュ/Ba)の弟と克哉がバンドをやっていたんですよ。愁からも「ウチの弟がバンド始めたんだよね。」って話があって、その繋がりでエンジニアリング見てあげてよ、みたいな。

 

克哉 : 2011年ですね。バックグラウンド的にもЯyoさんは自分にとって作曲はじめたきっかけだったりして、ギルガメッシュが俺の音楽的素養の基盤を作ったと言っても過言ではないくらい超絶ファンだったんで……絶対Яyoさんにお願いしたい!って感じでした。

 

Яyo : だから最初は愁がきっかけかな。ただ深く関わっていくうちに「コイツ、イカレてるな……!」って。音楽に対してね(笑)。

 

克哉 : (笑)。

 

Яyo : そこでかなり親密な仲になって。

 

克哉 : 制作を通して仲が深くなっていきましたね。

          

-お互いの第一印象はどうでしたか?

 

Яyo : どうだったかな?

 

克哉 : 俺はまだ当時17歳で、高校3年生の途中で。

 

Яyo : 子どもっすよねまだ(笑)。ほぼ10年前?大学受験がどうたらとか話したの覚えてます。若くてもこんなしっかりしたものを作れるのかって関心した思い出があります。

 

克哉 : まずファンだったんで、Яyoさんを目の前にして「うわ、本物だ」って(笑)。当時ライブに行ったりしてて。ファンクラブにも入ってたんですよ。GMFC俺入ってて。

 

Яyo : なつ(笑)。面と向かって言われるとこっぱずかしいですね。

 

克哉 : 会ったら良い意味で想像通りの人で。好きな人って実際に会うとそれまでの印象から悪い意味で変わることも多くて「うわ、こんなクソ野郎だったんだ。」って感じることもあるけど、Яyoさんに関しては全くなかったですね。

なんか、人間としてもクリエイターとしても確立されている感じがして、今に至るまでの印象がひとつも変わってないですね。

 

Яyo : ありがとう。

 

-当時子どもだとも感じたと仰っていましたが、そこから約十年が経ち、現在のお二人の印象は変わりましたか?

 

Яyo : 根本的には変わらないですけど、ちょっと大人になったかなっていうか、バカ加減というか(笑)。イメージは変わってなくて、制作面だったり作る曲だったりはすごく成長していて尊敬しています。……根本的には変わってないですけどね。

 

克哉 : やりたい音楽の軸は変わってないけど、出来ることが増えていってる。

 

Яyo : もちろんそれは成長と共に付いてくるもので、そういう進化はあるんですけど……変わってなくて、芯がある。変わってないし……変わってないですね(笑)。

 

一同 : (笑)。

 

Яyo : 人間的に、大人の対応がちゃんと出来るようになってきたなっていうのはわかるし。

 

克哉 : そうですね。人間としてはそんなに変わりはないかもしれないけど、若い時は経験が無いから起こること全部が初めてで、耐えられないことが沢山あって。

 

Яyo : すぐ顔に出ちゃうみたいな面では大人になったね(笑)。かわし方がうまくなっていった。今までは思い通りにいかなかったらカーッってなってワーッってなって、俺が「まぁまぁまぁ……」って感じだったけど、メンタル面での成長は大きいかもしれないね。

 

克哉 : 頻繁に相談に乗ってもらっていて。よくメンタルケアをしてもらってましたね(笑)。

 

Яyo : 精神面的にしんどかったかもね。大学辞めるのか辞めないのかとか。あれ結局いつだったっけ。

 

克哉 : いつからか休学していて、たしかギルガメッシュの『鵺-chimera-』リリースが決まったくらいの頃に色々忙しくなってきて「これいよいよ休学している意味もねぇな」と思って。踏ん切り付ける時だと思って。もともと大学に行く気は全くなかったのもあったし、あのタイミングですね。個人的な話過ぎるかな(笑)。

 

 

Яyo : 俺が辞めさせたような感じだ(笑)。

 

克哉 : (笑)。これもちょっとパーソナルすぎる話ですがバイト辞めたのもそのタイミングで、全てが絡み合って踏ん切り決めた時期だったなあと今思います。Misanthropistの発信を始めたくらいの頃。もうだいぶ昔に感じます。以前やっていたバンドも解散してしばらく経っていて、バンド始めたいのに始まらないなんて話をしていて。

 

 

-今こうして縁が続いていくのも素敵な話ですね。さて、エンジニア視点で、お互いにリスペクトしている点を教えてください。

 

克哉 : 全部って言ったらあれなんですけど……Яyoさんにしかない音があるんですよね。とにかく几帳面さに感心してました。セッションファイルの作り方から音像のまとめ方から……粗が全くないので。

 

Яyo : 人によく気を使うので。

 

克哉 : なんとなくそんなイメージありますね。もちろんパッションもあるんですけど、数値的な粗を感じない。自分はその粗がまだあるように自分で思っているので。適当にやってる訳ではないんですけど。そういう所にも自分に無いものを感じてます。

 

Яyo : 他人に対しては誰だってあるんじゃない?俺だって自分に対して粗だらけだよ。

 

克哉 : 各々あるかもしれないですけど、客観的に見てЯyoさんのサウンドは昔から「こんな音作れたら誰も文句言わないんだろうな……」なんて思ってたりします。

 

Яyo : 師弟関係みたいな感じなんですけど、関係的にはお互いにリスペクトしあっている感じ。「俺先輩だから!」みたいなのじゃなくて、人間だし、後輩だけども克哉には克哉のサウンドがあって。リスペクト出来るというか。そもそも自分自身リスペクトできない人間とつるまないんで。芯の無い先輩後輩ともつるまないし。そういう部分ははっきりしちゃってるかも。

 

克哉 : 月並みな言い方ですがすごく優しいですよね。そういう面でもЯyoさんに感化された部分があって。だから俺も、年下だから後輩だとか目下の人間だとか思わないようにしていて。Яyoさんを見てたから、キャリアが自分よりある人に同じ目線に立ってもらえる所でのやりやすさを実感していて、その方が圧倒的に生産性のあるな関係を築けるなって。

 

Яyo : これどうすか?って聞いた時に「あソレ、○○だからやめといた方がいいよ」みたいなこと言う先輩って、それだけで話出来なくない?

 

克哉 : それでシャッターがかかるんで。よくいる。基本的に世の中のエンジニア嫌い。

 

Яyo : 俺も嫌い。

 

一同 : (笑)。

 

克哉 : 一番ヘイトが溜まった案件が、仲良い知り合いから紹介された大きめのスタジオに就職されているエンジニアの方とのやり取りですね。俺みたいなフリーランスでエンジニア業務をやっている人間って煙たがられる時があるんですけど。

 

Яyo : 鼻で笑われるやつ。

 

克哉 : そう。「あ~フリーランス?わかってんの?」みたいな。「え?で?どんな案件やってんの?」ってノリで、サラリーマン同士のくだらねえマウントみたいな感じで来られることがあるんですよ。エンジニア同士が集まるとプロセシングとかサウンドメイクの話になることはよくあるんですが、「え?君どんなの使ってんの?」って聞かれて。

正直何使っても人の自由だろとは思いつつ、返したら「いや、それは駄目だよ!」って真っ向から超否定されたことがあって。じゃあ相当優れた人なのかな?と思って音聞いてみたら全然そうでもなくて。

 

Яyo : 俺らは音楽を創るエンジニアであって、彼らは録音をするエンジニア。だから電気なんですよ。音楽の話が出来る人が意外に少ない。

 

克哉 : 自分が思うに海外と日本との大きな違いで、海外のエンジニア・プロデューサーって音楽制作に長けている人間がなるものじゃないですか。みんな優れたコンポージングをしている。楽曲制作とか音楽制作を突き詰めた人がなるようなものであって。日本人は完全な分業が常識になっているところもあってアーティストが曲を作ってエンジニアが録音して商品にする、っていう流れが当たり前になってる。だからエンジニアが楽曲制作をわかっていない以上、話せることが限られてしまう。そういう人達はエンジニアではなくオーディオオタクと名乗れば良いのに。

 

Яyo : 未だに大きなレコーディングスタジオとかだと、コンソールの前でただ座ってるだけで固定給貰えるようなエンジニアが蔓延ってる。そういうのを通称ガラパゴスって呼んでる(笑)。

 

克哉 : 間違いないですね(笑)。

 

Яyo : スタジオって今どんどん潰れてるし、手軽にRECできちゃう時代だから。そういう面では制作のスタイルも変わって来てるよね。

 

克哉 : 俺はЯyoさんが昨今のDIY製作スタイルの第一人者だと思ってます。

 

Яyo : 10年前だったら打ち込んだmidiドラムでRECして製品化するなんてあり得なかったんですよ、生じゃないといけないって。でも今、そんなん無いですからね。今の時代は普通に打ち込みが基準になってたりね。

 

克哉 : 打ち込みを超えない生ドラムなら録る価値無し(笑)!こう言うと語弊を招くかもですが。

 

Яyo : ただ、未だにそれをしないと安心できない世代やアーティストもいるから、移り変わっている時代でもある。考え方を適応出来るかどうかが大事。

 

克哉 : 昔の媒体を見てもЯyoさんしかいないくらいだったんですよね。Protools使用してた人はいつつも、自己完結スタイルをあの領域まで行う人は。規模大きめのバンド、特にその時代ってアレンジャーなりプロデューサー・エンジニアがそれぞれいて、アーティスト以外の手が加わって世に出ているものが多かったと思いますが、唯一Яyoさんは全部自己完結していて。

 

Яyo : それがアーティストとして普通なんじゃないかと思って。だってこの音が欲しいっていうのって相手に簡単に説明できないじゃないですか。楽曲の取材でも、この音はどんな風にって聞かれても誰も答えられない。もちろん俺も初めから全部できたわけじゃなくて。全部勉強してきた中で表現出来るようになっていって。

 

克哉 : 僕も元々はЯyoさんにエンジニアリングをお願いしていた身でもあるので、当時はわからなければすぐ聞いてました。Яyoさんがミックスしている横で自分もDAW画面見て聴いて。でもたまに理解の範疇を超えたことが起きるので、その度に「今って何をしたんですか?」って(笑)。きちんと説明してくれて、ちょっと触らせてもらったりして。Яyoさんの音が好きだっていうのが前提としてあったのもあって、教えてもらうようになりました。ギルガメッシュのNOWっていうアルバムがあるんですけど、リリース当時あれが衝撃的で……今までのギルガメの音の中で一番良かった。

 

Яyo : そうかな、俺からすると酷いんだけど(笑)。

 

克哉 : いやそんなことないです。急に音が良くなったな!って驚いたんですよね。それまでは音が少し硬くて『よくある日本のヘヴィミュージック』って感じだった。カチカチって極端で、キックは鉄みたいな音でベチベチ、ギターはプラスチックみたいなバリバリの音。でもやたら低音はゴワついていて。2000年代の日本のラウドミュージックのイメージ。

 

Яyo : 自分で音楽を創って、こんな音像を届けたいっていうのが伝わったんだなって思うと、凄く、やってきて正解だったなって思います。決して良い作品だったとは思ってないですけど、自分の伝えたかったイメージが届くのは嬉しいですね。

 

克哉 : 本当に好きすぎたのでЯyoさんが関わるインタビューとかを漁るんですよ。全文献。で、「エンジニアリングまで全部やりました。」って言っていて、あぁそうなんだ。って。この人はそこまで行ったんだ、って思いました。

音質興味持ち出したきっかけとか、以前コラムで話したようなセルフプロュース・セルフエンジニアリングに対しての俺の中でのデカい存在はAdam(KILLSWITCH ENGAGE/Gt)なんですけど、そこにはЯyoさんもいて。自分の中での影響力はかなり大きなものになっていました。

 

Яyo : そんな関係です。

 

一同 : (笑)。

 

-ぶっちゃけトークが展開されるのもこの対談ならではと言うか(笑)。ちなみに、最近のお二人がヘヴィローテーションしているアーティストを教えてください。

    Comments are closed, but trackbacks and pingbacks are open.