克哉(SLOTHREAT/Misanthropist)の異分子のすゝめ Vol.4

克哉(SLOTHREAT/Misanthropist)の異分子のすゝめ Vol.4

TOPPA!!をご覧の皆様、こんにちは。克哉です。

 

最近無料音楽サイトに対する意見みたいな投稿が若干物議を醸していましたね。

中学生なのでバイトも出来ずなかなかCDを買えないみたいなやつだっけ。んまあ気持ちは痛いほどわかる。

でも今はストリーミングサービスとかがあるからね。

CD一枚買うお金さえあれば余裕で登録できてこの世の大体の音楽聞けちゃう (勿論全部ではない。特に邦楽はちょいちょい見当たらない事が多い) し、違法系と違って絶対に正規の音質なのが保証されているし、聞いた分アーティストにも利益は入るし、何かと互いにデメリットがあんま無いのでそちらを使えば良いのでは、というのが個人的意見。

 

まあどうでも良い事はさておき、昨今僕の中では若干グッズに近い捉え方になっているCDですが、未だに本当に気に入った音源は勿論フィジカルでも購入します。歌詞とかクレジットの詳細知りたいし、圧縮されていない音でも聞きたいし。

以前よりは減ってしまったけど、やっぱりCDを買う事は好きです。 昔はバイトで稼いだ金の全てをつぎ込んでCDを買いまくったもんだ。

放課後はいつも各地のディスクユニオン等のCDショップを巡って奔走していました。見つからなかったらアマゾンです。これ、結構共感してくれる方々いるはず(笑)

良き思い出なり。。

そうして入手したCD達は確実に自分の血と肉となっています。コンポーズの面でもサウンドメイクの面でも。

 

前回はサウンドメイクに関する話のプロローグを綴りましたね。

今回は自分目線でのサウンドメイクの深い所をお話していけたらと思いましたが、なにやら変な所に火がついてしまったので、そんな自分の中での感銘を受けた名盤や何かときっかけになったCD 達の事について思い出も含め主観で話していこうかと。

単なる名盤紹介ではなく、この度はサウンドメイクに主な照準を当ててお話ししていきます。あっ、これも大切な所なのであながち脱線はしていないですね。

 

ではいきます!

 

まずはこちら。

 

<1>DIR EN GREY 『激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇』(2009年リリース/シングル)

激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇

これまでちょくちょくサウンドエンジニアリングに目を向けたきっかけをお話してきましたが、今思うとこの作品がそこに関して全ての始まりだったなと思います。

当時相当な虜だったので(今もですが)、新譜が出るとのことで勿論ソッコー買いにいき、インタビューとかも読みまくっていたんですが、「今回はMixingをJens Bogrenに依頼した」との一節があり、そこからサウンド面の向上に関するお話をされていました。

でも当時まだサウンドメイキングの事など微塵も知識の無い僕はとにかく何の話をしているのか分からなくて理解するためにとりあえずJens Bogrenを調べたり、サウンドエンジニアリングの意味を知る為にそれも調べたり。

確かに、明らかに今までのDIR EN GREYの音源に比べて音が遥かにクリアでヘヴィだし、 バカっぽい言い方ですが当時の感覚そのままで話すと、音質が海外のヘヴィミュージックと比べても何 ら遜色無かったんです。

それで「なるほど!!!通りで。そしてこの、”音源の音”ってのはエンジニアという役職の人が作っているんだ!」といった風に、より一層音楽に対して知らなかった漠然といた所の曇りが晴れて、当時何かがパッとひらけた感覚があったのを今でもよく覚えています。

思い出補正抜きに、この音源のサウンドプロダクションは今聴いてもめちゃくちゃ気持ちいいです。

 

そして次はこれ。

 

<2>ギルガメッシュ 『NOW』 (2009年/フルアルバム)

Now

無論全作品好きなのですがこのアルバムは色々と思い出深い作品。

余談ですが当時やっとバイトも出来る歳になり、ギルガメッシュ大好き芸人の僕はこのアルバムが出て迷う事無く全パターン買いました。初めてそういう買い方をしたのでよく覚えています。

媒体等で何度かお話ししてきましたが、Яyoさんは僕の音楽人生の中でKillswitch EngageのAdam Dutkiewiczと並び特に沢山のきっかけをもたらしたコンポーザーです。

僕は2009年に楽器を本格的に始め、作曲という行為も始めました。当時右も左も分からぬ僕はЯyoさんのとある連載を見て、DTMというものを知り、居ても立ってもいられず即色々なフリーソフトをGetしそれらを駆使して作曲をする所からが作曲人生のスタートです。

そんな中、Яyoさんがこの作品に関するインタビュー等で「 ”NOW” では全て自分がサウンドエンジニアリングをした」とおっしゃっていて、このアルバムのサウンドプロダクションが当時聞いた中でも半端無く良かった,,,というかとにかく半端無く自分好みの音だったので、Яyoさんに対 する興味が止まりませんでした。今改めて聞くとまさに和製Andy Wallace。

楽曲もサウンドメイクもどっちも完璧に自分のツボど真ん中で、ここまで自分の心を掴む人がいるなんて、と当時衝撃を受けたのです。

それまで漠然とでしかなかった自分の望むミュージシャン像ですが、はっきりと「俺はこの人のような作曲/サウンドメイキング両方とも最強なミュージシャンになりたい」と具体化されたのはその瞬間だったと思います。そんな作品です。

このあたりから本格的にプロデューサー/エンジニアというものに興味を持ちました。

 

近い時期に既に出ていて愛聴していたKillswitch Engageの 『Killswitch Engage』も見返すとAdam が自分でMixingをやっているし、なんなら墓に持っていくアルバム筆頭の 『As Daylight Dies』 もAdamがMixingを手がけていて。

僕は当時『As Daylight Dies』のサウンドプロダクションがハイパー好きでした。ギターの音、特にブリッジミュート時の音がズンズンのブリンブリンのマッチョすぎて (本人らの超絶的な上手さによってテイクが最強なゆえでも有ります) 、とにかく低音のレゾナンス感が気持ちよすぎて楽曲を聞きまっくた後は、この音を聞く為だけに永遠にループしてました。

2004年にリリースしたヒット作 『The End of Heartache』(Mixing, MasteringはAndy Sneap) の音も大変素晴らしいのですが、僕の中ではその次に出した『As Daylight Dies』 。

 

<3>Killswitch Engage 『Killswitch Engage』(2009年/フルアルバム)

Killswitch Engage

<4>Killswitch Engage 『As Daylight Dies』 (2006年/フルアルバム)

As Daylight Dies

 

今でも大好きなサウンドプロダクション。そんな音を作っているのがAdam本人だと知ってしまい、ひたすらAdamを掘り下げ始めます。

そうするとまずAll That Remainsの『The Fall of Ideals』 がまず目につきました。

 

<5>All That Remains 『The Fall of Ideals』 (2006年/フルアルバム)

Fall of Ideals

 

代表曲であるThis CallingやSix等が入っているアルバムですね。メタルコア史において避けては通れぬ名盤の一つです。この作品のProduceとMixingをAdamがやっているのをそこで知ります。

そういったことを踏まえて改めて聴くと、「なるほど、たしかに音が<3、4>とそっくりだ」と。そしてやはり確実に楽曲の節々からも”Adam節”を感じるぞ、と。

 

ATRだけでなく、AdamはParkway Driveの ”Killing with a Smile” と ”Horizons” もProduceから録りからMixingまでやっているし、Unearthの ”The Oncoming Storm” やAugust Burns Red の ”Thrill Seeker” も同様。

Mixingはしていないものの、Unearthのその他のアルバムにも関与しているし、As I Lay Dying の多くのアルバムにも。同じ州のThe Acacia StrainやShadows Fallだったり、その他も様々。時代を象徴するバンド達とかなりの高確率で関与しています。

そうして、名プロデューサー/エンジニアと名盤の密接な関係性を認識しました。名盤の裏には必ず名プロデューサー/エンジニアが。時代を構成する上での大きな要素のうちの一つです。

 

あ、Adamに関連する名盤としてこれも紹介させて下さい。個人的に外せません。

 

<6>Times Of Grace 『The Hymn of a Broken Man』 (2011年/フルアルバム)

Hymn of a Broken Man

これはAdamとJesse Leach (Killswitch Engageの初代Vo。一時期抜けていたが今は出戻りしている。ちなみにこの時はKsEのメンバーではない。それもまたエモい。) によるユニットの作品。これも個人的に墓に持っていきたいシリーズの一つです。

楽曲・サウンドプロダクションから感じれるAdamの魂。生き様が音となって飛び交ってきます。

聴き終わる頃には号泣です。。。。

Killswitch Engageの今のところ一番最後に出したアルバム ”Incarnate” もAdamがMixingを手がけていますがそれのサウンドも素晴らしいです。

 

ちとAdam話が止まらなくなるのでこの辺にして次にいきます。。。(笑)

 

そうして僕はそこから更に色々なプロデューサー/エンジニアを掘り下げていきました。

ここからは、手がけたプロデューサー/エンジニアにも触れつつ、サウンドプロダクションに対し特に感銘を受けたきっかけの作品達を紹介していきます!そのどれもが、自分の中での善し悪しを計る上での指標になっています。

 

まず、Jason Suecof。

彼が手がけたAugust Burns Redの “Constellations” と、Bury Your Deadの “Beauty and the Breakdown” と “Bury Your Dead” 、この3枚のサウンドプロダクションは相当好きで耳にインプットしました。DIR EN GREYの ”Lotus” を手がけていたりもします。

 

<7>August Burns Red “Constellations” (2009年/フルアルバム)

Constellations

<8>Bury Your Dead “Beauty and the Breakdown” (2006年/フルアルバム)

Beauty And The Breakdown

<9>Bury Your Dead “Bury Your Dead” (2008年/フルアルバム)

Bury Your Dead

 

そしてFredrik Nordström。

彼が手がけた中でもBring Me The Horizonの “Suicide Season” と、Confessionの ”The Long Way Home” 。

特に後者のサウンドには当時度肝を抜かれました。ヘヴィすぎる。ローがことごとく深い。

 

<10>Confession “The Long Way Home” (2011年/フルアルバム)

The Long Way Home

 

次はJoey Sturgis。

彼と言えばRise Records。

00年代から頭角を表し、2010年以降においてヘヴィミュージックのサウンドプロダクションのスタンダードを更新した存在ですね。

彼が手がけたうち、Oceanoの ”Depths” 、Emmureの ”Speaker of the Dead” 、The Air I Breatheの ”Great Faith in Fools” 、Chunk! No, Captain Chunk!の ”Pardon My French” を挙げさせて頂きます。

どれも素晴らしいサウンドプロダクションです。

 

<11>Oceano “Depths” (2009年/フルアルバム)

Depths

<12>Emmure “Speaker of the Dead” (2011年/フルアルバム)

Speaker of the Dead

<13>The Air I Breathe “Great Faith in Fools” (2011年/フルアルバム)

GREAT FAITH IN FOOLS

<14>Chunk! No, Captain Chunk! ”Pardon My French” (2013年/フルアルバム)

Pardon My French

 

そしてTaylor Larson。本当に凄いと思います。

特にここ最近の彼のサウンドプロダクションは隙がなさ過ぎます。特に2016年リリースのJason Richardsonの “I” には驚かされました。

基本的に大体の作品がめちゃくちゃ音良いので選別が若干難しいですが、ここまで思い出感銘系を上げてきたので、Peripheryの ”Periphery II” を挙げさせて頂きます。

マスターボリュームが若干小さめですが、ものすごく整っていてかつヘヴィな、ことごとくバランスよく気持ちのいい音像です。

 

<15>Periphery ”Periphery II: This Time It’s Personal” (2012年/フルアルバム)

Periphery II

 

まだまだいきます。

 

Jacob Hansen氏が手がけたDreamshadeの ”The Gift Of Life” 。

この作品は、自分にとって最も音が良いと思うアルバムを5個だけ選べと言われたら間違いなく入ってくる作品です。

衝撃的に音が良かった。バンドインしてからの2秒聞いただけでも音やべえって思いました。

 

<16>Dreamshade “The Gift Of Life” (2013年/フルアルバム)

The Gift Of Life

 

Think Loud Studios (ex.Atrium Audio) のCarsonとGrantが手がけた、Sirens & Sailorsの“Skeltons”。このアルバムの、全体の方向性にしては一癖あるギタートーンは病み付きになりました。

あとはTexas In Julyの “Bloodwork” 、I The Breatherの “Life Reaper” 。

 

<17>Sirens & Sailors “Skeltons” (2013年/フルアルバム)

<18>Texas In july “Bloodwork” (2014年/フルアルバム)

Bloodwork

<19>I The Breather “Life Reaper” (2014年/フルアルバム)

Life Reaper

 

そして最後。

今の自分ではっきりと自覚している、僕のサウンドエンジニアリングする上での方向性の基盤をハッキリと固めてしまったきっかけの作品達です。

どれも最高のサウンドプロダクションです。

Josh Schroederが手がけた、In Hearts Wakeの ”Divination” と “Earthwalker” 、Those Who Fear の “Death Sentence” 。

 

<20>In Hearts Wake ”Divination” (2012年/フルアルバム)

Divination

<21>In Hearts Wake ”Earthwalker” (2014年/フルアルバム)

Earthwalker

<22>Those Who Fearの “Death Sentence” (2014年/フルアルバム)

Death Sentence

 

そしてWill Putneyが手がけた、Like Moths to Flamesの ”When We Don’t Exist” と “An Eye for an Eye” 、Gideonの ”Calloused” 。

 

<23>Like Moths to Flames ”When We Don’t Exist” (2011年/フルアルバム)

When We Don’t Exist

<24>Like Moths to Flames ”An Eye for an Eye” (2013年/フルアルバム)

An Eye for An Eye

<25>Gideon ”Calloused” (2014年/フルアルバム)

Calloused [12 inch Analog]

 

Will Putneyはとにかく太鼓の音が最高なのと、全体のギチギチ感 (無論良い意味です) が凄まじい。生々しくもあり、密度が高くめちゃくちゃパワフル。

あくまでも個人的意見ですが、ここ近年のヘヴィミュージックのサウンドプロダクションのスタンダードは彼によって塗り替えられつつあるように思います。

 

前述した<20>~<25>これらの作品は僕の中で見い出している共通項が有りますが、それは密度です。

張り付くような圧力のある音像。でも決して苦しくなく、とにかく心地よく鼓膜を揺さぶってくる。

ぶっちゃけまだまだ沢山紹介したい所なんですがこの辺で。。。

気になった方は是非聞いてみて下さい。というかここまで読んでくれたのなら漏れなく聞け(笑)!!

 

きっかけという事もあり直近のリリースが少なめですが、ここ近年もヤバい音像の作品はどんどん産 み落とされています。 日に日に時代ごとアップデートされていっているのをひしひしと感じます。

 

そんな中で、いかにアイデンティティをしっかり持ってサウンドメイクに取り組んでいくかが一番大切だなと考えます。

後世まで残る作品というのは、楽曲の内容だけでなくそういった全ての要素もクリアしている筈です。

誰もがきっとそうなのですが、僕も日々研究をしている身です。

 

次はヤバい楽曲ってのは勿論、前作の ”Allium” のサウンドプロダクションをどう超えられるか練っている所です。

SLOTHREATの7月5日リリースのデジタルシングル、色々と楽しみにしていて下さい。ではまた!

 

克哉


関連 : 克哉(SLOTHREAT/Misanthropist)の異分子のすゝめ Vol.3
https://toppamedia.com/column-katsuya-ibunshi-no-susume-vol3/

関連 : 克哉(SLOTHREAT/Misanthropist)の異分子のすゝめ Vol.2
https://toppamedia.com/column-katsuya-ibunshi-no-susume-vol2/

関連 : 克哉(SLOTHREAT/Misanthropist)の異分子のすゝめ Vol.1
https://toppamedia.com/column-katsuya-ibunshi-no-susume-vol1/

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