細川成美 インタビュー

細川成美 インタビュー

細川成美(読み方 : ほそかわなるみ)
HP : http://gdarkness.wixsite.com/narumi-hosokawa
Twitter : https://twitter.com/giRly_darkness
Instagram : https://www.instagram.com/narumi_hosokawa/

細川成美女史は1994年生まれ名古屋出身、多摩美術大学在籍中の美少女画作家。繊細で独自のタッチ・色彩感で描かれる彼女の作品は、どこか儚げで、その世界観への想像を掻き立てられる。ただ、それは性的に消費される対象では無く、反骨や媚びといった要素は存在しない。正当な美少女の追求……彼女の思考は純粋にそれを追い求める。

WEB・展示会を中心に活動する彼女だが、近年はアーバンギャルドの「鬱フェス」アートワークや、あの(ゆるめるモ!)、黒宮れい(BRATS)のポートレート等、音楽に関連した作品も手がけている。この事をきっかけに、彼女あるいは彼女の絵の事を知った読者も多いのではないだろうか。

今回、細川女史に対し、彼女の生い立ちから絵・音楽的ルーツ、現在の画風確立のきっかけや作品製作時の心がけ等を伺うべく、怒涛の1万字超えインタビューを実施した。

取材・文・編集 / 宮久保仁貴


 

-TOPPA!!初登場という事で、改めて細川様の自己紹介をお願い致します。

 

細川成美 : 愛知県名古屋市出身で、もともと漫画とかアニメを愛する家族の元で生まれ育ちました。母が手塚治虫の大ファン、妹は趣味の合うオタク友達のような存在、そして父も娘と一緒にアニメを見るような家族でした。だから、アニメや漫画が一番身近に触れていた分野で、それらに感化されて絵は物心つく前から好きで描いていました。

 

-なるほど。どのような雑誌を読まれていたのでしょうか?

 

細川成美 : 小学生時代は特に『ちゃお』とか『なかよし』を祖母が買ってくれて、そういった女児向けの分野の漫画を読んでいました。同時に母が持っていた古い世代の漫画も読んでいましたね。手塚治虫作品は言わずもがな、『ガラスの仮面』『パタリロ』『漂流教室』などです。また、小学生時代、ちょうど週刊少年サンデーで犬夜叉が連載されてる時期だったと思うんですけど、その漫画とアニメも見ていました。

中学生時代は趣味がちょっと変わり、少年漫画にハマるようになりました。『週刊少年ジャンプ』の漫画をメインに、『ドラゴンボール』とか、『D.Gray-man』、『デスノート』、『家庭教師ヒットマンREBORN!』、『銀魂』、『SKET DANCE』、『黒子のバスケ』などなど……。それと同時に、大暮維人さんの『エア・ギア』とか『天上天下』なんかも単行本集めたりしてました。

あと、これは中学時代なんですけど、少年漫画にハマる同時期ぐらいに丁度VOCALOIDが誕生したんですよね。そこから、ニコニコ動画に触れました。誰でも曲を作れる、しかも初音ミクが絶対的に幅広い音域を保証してくれ、その歌声を調教するというシステムに驚きましたね。ニコニコ動画っていう発表場の土台もあってか、作曲の才能を持っていても思い通りに歌えずその才能を発揮できていなかった層から大量のスターが生み出されるのを幼いながらに肌で感じてきました。本当に革新的で面白い文化だと思います。そこから高校時代は、VOCALOIDや「歌ってみた」「踊ってみた」などの分野を趣味として楽しんで見てました。いろんな歌い手さんのバージョンを入れるから、ipodに同じ曲名が複数入ってる、そんな状況でした。

同時に学校ではKPOPブームが到来していて、東方神起、少女時代、KARAなどの好きな韓国アイドルを観賞したりしてましたね。

 

-そこから、現在在学されていらっしゃる多摩美術大学に進学されましたよね。こちらに進めれたきっかけを教えて下さい。

 

細川成美 : 当時は美術大学に行く予定が一切なかったんです。家族が嫌がると思って。美術の分野の多くは「職にできるかできないか」「収入が安定するかしないか」という問題があって中々難しいじゃないですか。行かない前提でいたんですけど、ある時母が「もしかして、行きたいんじゃない?行ってもいいんだよ」と言ってくれたので、その後予備校に入ってデッサンや諸々を学び、目指すことにしました。

実は今の大学に入る時に、愛知県立芸術大学という県立の大学と、多摩美術大学という2つの進路で迷いました。1人暮らしの費用と私立の学費の合計に比べると、経済面では愛知の方がどう考えても安く済むからです。でも、創作活動をする上ではやはりギャラリーが多い東京の方が利があるし、先進的なクリエイティブが集まる都市はやっぱり東京だと思いました。愛知にいた時からずっと危惧していたことなんですが、愛知だけが世界ではないので、創作をするなら情報の鮮度や空気など絶対に東京のものを感じておいた方が良いなと思いました。
あとは、知人がすでに何人も通っていたので、今更行っても面白くないなというのがありましたね、どうせだったらもっと見たことないものや人に会いたいという思いが強かったので、多摩美術大学に行くことにしました。

 

-なるほど。実際に入学されてからはどの様な活動を行われてきたのでしょうか?

 

細川成美 : 入学してから夏休みまでは、課題の量に慣れるために学業をメインにこなして夏休みから始める展示活動のスケジュールをずっと練っていました。

夏休みに入って展示を始めてからも、課題の量と頻度が多いカリキュラムにもかかわらず学業をサボるのがどうしても嫌だったので、課題をやりつつ自分の作品を描く時間もとらなきゃで、結構ハードでした。多摩美のグラフィックデザイン学科って課題の量が細かくて多いんですよ。なので、アトリエに残って課題の作業をして、10時くらいに帰宅して自主制作して、ということを毎日やっていました。企画展が週に1本ぐらい、月3-4本ぐらいあって、毎週2-3作の作品を作りました。だから月10作ぐらい作るやり方で毎回展示活動をやっていましたね。

最近は展示の質を限定して選んでいるので、おかげさまで、描いたことない題材を描くとか、絵画以外のもの、イラストの依頼とかコラボレーションなども余裕を持って受けられるようになりました。

 

-ありがとうございます。それでは、美少女画作家として名を馳せ、近年は音楽アーティストのグッズデザイン・ポートレートも作成されている細川様ですが、 改めてその絵・音楽的ルーツを教えて頂けますでしょうか。

 

細川成美 : 割と雑多なんですけど……1つ言えるのが、基本的に私はカラオケとか歌うのが趣味なんです。なので自分の音域に合うもの、女性ヴォーカルの曲を聴いてしまうんですね。男性の曲も一応聴くんですけど…。ジャンルも偏ってはいるけど割と雑多に聴いていて、女性アーティストメインにK-POP、邦楽や洋楽、アニソン、VOCALOID、この辺がメインです。本当に好きなものだと、ゲームの歌や同人音楽なども聴いたりします。結構スローテンポな感じの曲が好きなんですよね。

あと、これは男性のアーティストなんですけど、ZAYNの「PILLOWTALK」という曲が大好きで、制作中ずっとリピートしていました。本人の声が澄んで美しいですし、ゆったりしたテンポながらPVは非常にアーティスティックで刺激的でありました。初めて聴いた時は鳥肌が立った記憶があります。

特定の女性アーティストだと、ARIANA GRANDEとか、TAYLOR SWIFT、ALLIE X とか、1人脱退したらしいんですけどFIFTH HARMONYも好きです。洋楽はファッショナブルな映像やテンポの良いものが好きで、言葉が分からないからこそ、心地よい体感的なリズムを好んで聴いていますね。邦楽だと歌詞にこだわりがあるものが好きで、コラボさせていただいたアーバンギャルドさんのある種中二病的なストレートな世界観が大好きですね。また、大森靖子さんとか黒木渚さんも大好きで、やっぱりひた隠さない直情的な、刺激的な歌詞のものに感情を大きく動かされます。あと、ヴィジュアルから入ることもあったりします。 DAOKOさんに関してはもう完全に本人のヴィジュアルから入ってしまった感じで、「あ、かわいい!!」と思ってそこから曲を聴きだしました。本人の売り出し方も「女子高生」っていう最強のポジションを利用しつつそこにラッパーの要素を押し出していて、良く出来たマーケティングというかプロデュースだなと思った記憶があります。あとは、最近また個人的にK-POPのブームが来てまして、LOONA、Redvelvet、BLACKPINK辺りに夢中になっています。

 

-幅広い聴き方をされていらっしゃいますね!さて、画家としてのお話に移りたいと思います。細川様が美少女を描く事に目覚められたきっかけを教えて下さい。

 

細川成美 : 決定的だったのが、小学生時代に夢中になった球体関節人形です。当時『月刊コミックバーズ』で連載されてた『Rozen Maiden』。あれを小学生の時に読んで……あれがきっかけで少女人形に夢中になったんです。手首などの関節に球体がはめられてて、動かせるようになってるんですよ、顔がリアルなのは言わずもがな、より人間らしい動きも再現が可能になっています。

ドールの話をしますと、その当時、一時の人形ブーム的なものが少なからずあって、人形人気が今より高かったように思います。日本で認知度の高いドールのブランド、スーパードルフィーやユノアクルス、それ以外に韓国ドールのブランドも調べていました。また『Dolly*Dolly』っていうドール専門雑誌やスーパードルフィーのパーフェクトカタログを買い漁ったり、すごく技術力の高い個人が自分独自のメイクを施した人形のブログなども追っていて……それこそドール関連のイベントにも行っていました。

名古屋にアイドールっていうドールのイベントがあって、デザインフェスタとかコミティアのドール版みたいなものですね。ドールに関して、作った服や靴とか、カスタムした人形自体を売ってるだとか、ドール愛に溢れた人達が集まるイベントなんですよ。話が長くなっちゃいましたが……人形から一番影響受けているのかなと感じています…。そのぐらいすごく好きだったんです!球体関節人形にハマって、それをどんどん調べていったら、最終的にはどうやらビスクドールというものがあるってことに行き着きまして。

ビスクドールって19世紀ぐらいのヨーロッパ貴族が持つような陶器で出来た人形のことなんですけど、今作られているものは顔がリアルの少女に寄せられたものも多いんです。中でも、恋月姫さんや吉田良さんというビスクドールの作家さんが好きでした。吉田良さんの作品は唇の隙間から見える前歯まで作られていたりするんですよ。私の絵でもあえて口の中を描いて歯にハイライトを入れたものが登場するんですけど、これの影響です。人の手でここまで人間の顔が再現可能なんだと本当に感動してしまって。人形の中には残酷さや痛みを内包したようなものも多いんですけど、そういうのはあまり好きではなくて、個人的には純粋に美しいものがすごく好きなんですよね。そういう人形の顔や比率を模写していた時もあって、顔のリアリティに関して結構影響受けてる可能性がありますね。

 

-今のお話から、細川様自身からの愛もすごく伝わってきました!

 

細川成美 : ありがとうございます(笑)。実際に私も1体持っているんですよ。自分の理想的な少女人形を持ち歩くじゃないけど、一緒に連れてみたいなと思いまして。対人コミュニケーションが苦手な自分にとっては、自分と同じ人の形をしてるとっつきやすさがありつつ、でも人じゃないところが安心できるポイントなんだと思います。人形は感情を持たないから、温かい言葉を投げてくれるわけではないけど……反対に何かを言い返してくるわけでもない、自分を否定することがない、そういう優しい沈黙みたいなものが自分にとって居心地よくて、ある種の救いや、「私だけの」を約束してくれる心の拠り所のように感じています。そんなところに魅了されて、自分の好きな髪型や格好をさせた少女を描き始めました。この気持ちは今も変わらないですね。人形みたいに、誰かの心の隙間にするっと入り込むような……そういう女の子が描けるといいなと思ってます。

 

-ちなみに、普段の執筆時に気をつけていらっしゃる事はありますか?

 

細川成美 : 私の作品のスタンスは、”男性にも女性にも愛される現代の大和撫子”というもので。一つは少女にちゃんと知性や品性を反映させるという事をモットーにしていますね。だから、売る目的で変に施される色気や露出、媚びた表情は絶対ご法度にしています。男女間では特に美に対する認識はすれ違い、一致しない部分が多いんですけど、男の子がかわいいと思う女の子の中でも、女の子が不快に思わない女の子っているじゃないですか。もともと少年漫画を読んでいたこともあって女の子の好みは男性寄りな方だと自負しているので、そこで、女性が見て不快に思わないものを描く事を考えた時に、やっぱり品とか、ある程度知性のある表情を入れた方がいいんだろうなと思ったんですよね。

もう一つは絵画を描いていて、どこまで説明するかということに気を使っています。表情を付け過ぎないという所ですね。自分の作品を「美少女画」と自分で銘打ってるんですけど、その醍醐味は「この子はどんな風に笑ったり泣いたりするんだろうか?」と想像する事だと思っているんですよ。ストレートに笑顔や泣き顔の表情を描いてしまうと、それが正解になってしまうので、もう少し見た人が想像を膨らませる余地を残す為に、あえて深く感情を加えないようにしています。その代わり、画面を構成する時の構図や服や髪型を選ぶ時に、わりかしその子たちの個性や性格をイメージしやすいように、意図的にモチーフを選んでいます。

 

-独自の美学をお聞き出来て何よりです。普段、一つの作品が完成するまでに、平均してどれくらいの時間を費やされますか?

 

細川成美 : ものによりけりで、サイズと人数によって変動しますね。例えば、人数が1人で、サイズが小さければ小さいほど時間は早くなります。例えばアーバンギャルドさんの鬱フェスのビジュアルは、6-7人の女の子がいるのでかなり時間がかかりましたね。それこそ、色を塗るまでに2週間くらいかかってますね。あと、今年やった展示のメインビジュアルは被写体が1人なんですけど、サイズが大きくて。この場合も2週間くらいかかりましたね。ただ、平均すると、いつもは2日ぐらいで制作してますね。

 

-直近ですとあの(ゆるめるモ!)様のポートレートを描かれていらっしゃいましたよね。こちらを描かれた時は如何でしたか?

細川成美 : あれは本当に難しくて。打ち合わせの時に本人にも伝えたんですけど、あのちゃんって良い意味でものすごく顔に癖が無いんですよ。写真に写ってる彼女の顔のどの陰影を拾うかをずっと悩んでいました。そこを忠実に拾えないと、本当に少しの違いで似なくなっちゃうんです。なのでこの作品は本当に時間がかかりましたね。あとは、彼女が出演している動画とか、Twitterでアップされた写真とか、本人の宣材写真をチェックしたんですけど、どれも不思議と全く顔や表情が違っているんですよ。みんなが思っているあのちゃんらしさが、自分の手元の取材して撮影させていいただいた資料の写真を見ても出てないんです。だから、資料はあのちゃんの顔の造形を正確に描くために見て、それ以外の多分ファンはこういうイメージで見てるんだろうなっていうフィルターを見つけるためにTwitterのメディア欄をものすごく漁りました。

-同じく音楽アーティスト様のポートレートですと、黒宮れい(BRATS)様も描かれていらっしゃいますよね。

細川成美 : 黒宮れいちゃんは、結構顔に特徴のある子なので、そこをきちんと拾うことで、似せられる顔のタイプでした。あの時は、マネージャーさんが撮った奇跡の1枚の写真……ちょうど私が描いた絵のあの恰好で写ってる写真があったんです。思わず「これはかわいい……!」と思って、その写真をもとに私が突発的に描いたものを、ギャラリーのオーナーさんを通して連絡してもらって、「展示していいですか?」って許可を取ってもらったんです。その奇跡の1枚が本当にかわいくて、素晴らしくて、そこをどうにか出せないかなと思って……いつもセーラーの襟を真っ青にしてるんですけど、その時だけは本当にその写真の端々の色味を忠実に拾う意識で描きました。

 

-両者共に、各人の個性が出ていて、なおかつ一発で細川様の絵だとわかるマスターピースだと思います。ちなみに、細川様が画家として初めて描かれた作品はどの様な作品になりますか?

 

細川成美 : これはいろいろありまして、結構どれにしようか悩んだんですけど……たぶんこれかなと思って。この鼻血が出ている女の子シリーズです。

れがおそらく、一番最初にアクリルで描いた作品ですね。「恍惚」というタイトルの作品で、私のホームページにも載っています。もともと私はデジタルで描いてたんですけど、ギャラリーに行ってから、「デジタルじゃ売れないからアナログで描きなさい。」って言われて、この作品を描いたんです。2作品あるんですけど、結構サイズが大きくて、赤い服の方がB2、青い服の方がB3サイズになります。

本当は鼻血を垂らすつもりはなくて、普通にアクリルでかわいい女の子を描こうと思ってたんですけど、いざ出来上がってみたら「何か足りないな……?」と思ったんですよ。これはもしかしたらあった方が良いかもしれないと思って、完成した後、搬入する前に鼻血を描き加えてしまいました。搬入した時に「何で鼻血出してるの?」ってすごく心配されてたんですけど(笑)。いざ個展で販売したら、鼻血を出してるのが面白かったみたいで、思いの外コレクターの方が気に入ってくださって、その2つは無事にお迎えが決まりました。初めて描いた絵が売れていくのはすごく印象的な出来事でした。

 

-なるほど。それでは、商業として初めて描いた作品を教えて下さい。

 

細川成美:これですね。

[eicateve 2nd Album “LOVE” / CROSSFADE]
https://soundcloud.com/eicateve/eicateve-love-crossfade

細川成美 : 実は大学に入学して初期ぐらいの時に、一度有償でイラストを描いたんです。元々はデジタルで描いていたって言ったんですけど、こういう感じのものを描いていて。

Twitterのフォロワーに同人音楽を作っている方がいて、eicateveさんという方なんですけど。その人が2ndアルバムをリリースされた際に、描かせて頂いたこの絵が初めてだったと思います。ちょうど私が大学入学した時くらいからかな、もともと結構仲の良いフォロワーさんで、古くから付き合いがある人なんですけど、その人がとある作品を気に入って、依頼をくれたんです。「髪の毛の中に世界があるような、そういう表現が非常に気に入ったので、そんなイラストが書いて欲しい!」というリクエストでこのジャケットイラストを描きました。

当時デジタルのイラストは今見ると結構下手くそんですけど……当初は「かわいい外見・容姿攻撃的な性格の2面性をテーマにしていたんです。予備校時代から大学入学初期にかけて確率した作風で、ライフワーク的に継続して書いてたイラストレーションなんですけど、グッズにした時の見栄えはむしろ今のよりも断然こっちの方が良かったりして、今でも気に入っている作品ですね。

 

-この頃から今の作風の要素が垣間見得ますね…•!続けて作品の話に移りますと、近年アーバンギャルドの「鬱フェス 2018」のメインビジュアルを書かれたり、作品『ブリリアント・サマー』が菊勇株式会社の新作夏酒「純米大吟醸 すずかぜ」のラベルに採用されたりと、華々しいニュースが多いですね。これらが決まったきっかけを教えて下さい。

アーバンギャルド公式HP http://urbangarde.net/info.html
アーバンギャルドofficial blog https://ameblo.jp/zeneitoshi/entry-12366647554.html

細川成美 : アーバンギャルドさんの依頼は、突然メールで送られてきたんです。当初、私はTwitterで一方的に浜崎容子さんをフォローしていて、まさか認知されているとは思ってなくて。どうやらアーバンギャルドのマネージャーさん曰く、メンバーのどなたかが作品を気に入ってくれたらしいんですね。それで使いたいんです、という連絡が来まして。あの時は「うわー!!!きたー!!」と思って思わず声が出ちゃいました(笑)。

後日アーバンギャルドのマネージャーさんと松永天馬さんと打ち合わせをしたんですけど、その時に自分の作品のメッセージを松永さんがかなり的確にとらえてくれていたんです。というのも私は結構、同じ髪型、同じ外見、同じ服装の女の子を描くことが多いんですよ。そういうところに目をつけられて、典型的な美少女像、理想像を非常にアイコニックに描かれていますよね、と。そういう意図・メッセージを含めて描いている事を認識してくださっていて。作品に関してものすごく考えてくれていたんです。その日の打ち合わせで、「是非描かせていただきます!」と言いました。また話を聞いたら、私は2016年3月に個展をしてるんですけど、その時から浜崎さんが作品を知ってくれていたみたいなんです。もしかしたらその時から、いずれ依頼をいただける可能性はあったのかもしれないですね(笑)。

作品の方向性を相談をした結果、作品「少女ダンス」の方向性が近いとのことで、セーラー服がいっぱい描かれている作品を描く事になりました。

 

-こちらの作品はどの様なプロセスで描かれたのでしょうか?

 

細川成美 : この作品を作った時のイメージとしては、中央に女の子がいて、周りに顔が写ってない状態の女の子が浮遊している構図を意識しました。その中で、中央の女の子だけネイルを赤にしてあるんです。あと、本当に小さいので分からないと思うんですけど、周りの女の子たちが黄色とか白とかグリーンとか、いろんな色のネイルをしていて……そこに、いろんなアーティストが集まって、リボンを全員が持っていて、一つのイベントを作り上げるというイメージで作りました。あとは、やっぱりアーバンギャルドのモチーフとしてセーラー服が使われている事が多かったりしたので、何か魅惑的なテーマを取り込みたかったんですよね。スカートの中の色をショッキングピンクとか鮮やかなグリーンにすることで、めくりたいものとか覗きたいもの……そういうメッセージを込めました。

 

菊勇株式会社公式Facebook : https://www.facebook.com/36samurai/photos/a.264451740758928.1073741828.264270997443669/314141152456653/?type=3&theater

菊勇に関しては、私が作品を販売するのに使っている通販サイトのお問い合わせからメッセージが送られてきたんです。内容としては、「作品が気に入ったので弊社が作る新作の地酒のラベルに使わせてほしい。」との事でした。

実は少し前から、年配のファンが買えるグッズを作りたいと考えていたんです。どうしても既存の印刷会社に依頼するものってステッカーや缶バッジとか、年配の方には向かないグッズしか作れなくて。その時に日本酒の依頼が来て、これまた「来たー!」と思って引き受けました。さすがに日本酒のパッケージだからセーラー服は使えないので、着物とかの夏らしいイメージの作品を5-6点送付して、どれが良いですかって聞いたら、丁度今製品パッケージで使われているそれを選んで頂きました。イラスト自体は菊勇様のために描き下ろしたものではなかったんですけど、イラスト描いてる時の自分のイメージは……私は『海がきこえる』という映画が好きで、そういう懐かしいノスタルジックな感じの、記憶の中にある美しい海みたいな……そういうものをイメージして作りました。

 

-活動の幅が広がりそうな出来事ですね!さて、近年これらの他にも数々の経験をされていらっしゃるかと思いますが、直近の活動で特に印象深かった出来事を教えて下さい。

 

細川成美 : 私がクリエイティブで、頑張っててよかったと思ったことが一つありました。小学生時代にめちゃくちゃ漫画好きだったって話をしたんですけど、ブックオフに頻繁に通っていたんです。それで吉富昭仁さんの描いてる『RAY』っていう漫画、あれを一度読んでめちゃくちゃ好きになって、……中学・高校と思い出すたびに読んでいたんです。その事を最近ふと思い出して「『RAY』っていう漫画がめちゃくちゃ好きなんですけど……!」とツイートしたらご本人が私のtwitterアカウントをフォローしてくださったんですよ!小学生からずっと読んでた好きな漫画家さんと、こんな形で10年越しくらいに出会えたので、本当に嬉しかったですね。自分が絵を描いていなかったらフォローいただけなかったでしょうし、するとtwitterをやっている事にすら気付けないままだったかもしれなくて。本当に偶然のことなんですけど……!いつも頑張って活動しておいて良かったなと思いました。

 

-今の時代どう繋がるかわからないものですね!話は変わりますが、細川様が最近触れた方や物の中で感銘を受けた人や物を教えて下さい。

 

細川成美 : K-POPのアイドルグループのPVにめちゃくちゃハマってます。LOONAっていう女の子のアイドルグループなんですけど、2016年くらいから活動を開始したみたいで。面白いというか特殊なのが、メンバーが1人ずつ月1で公開されるんですよ、2016年から1人ずつ、そのメンバーがメインの楽曲とPVが公開されていくんです。そして2018年の3月、メンバーが公開された時に「あぁ、好き!」ってなりましたね(笑)。彼女の名前は(Olivia Hye)オリビア・ヘっていうんですけど、「Egoist」っていう曲で、そのビジュアルと曲が、自分の理想の作品イメージとものすごく合致していたんです。歌詞の内容は言語が違うので聞き取れないんですけど、PVに赤色をメインに使っていたりだとか、女の子が2人登場するんですけど、すごく友情めいたような、恋愛めいたような、女の子同士の愛情や母性をほんのり感じる、しっとりとした雰囲気で、曲調はすごく心地よくて。私は好きな曲があったらその1曲をずっとリピートするんですけど、最近はその曲だけをずっと聴いてました。その子に夢中ですね。

 

-作品に良い影響が出ると良いですね!続きまして、近年の画家/イラストレーターシーンはWEBやSNSの発展で大きく移り変わる過渡期にあると思われますが、こちらについて思う所を教えて頂けますか?

 

細川成美 : クリエイターの飽和時代だと思っています。こういうのをレッドオーシャンって言うのかもしれません……あらかた画風や絵画の種類が出尽くしている時代。だから古いものが何度もリバイバルを繰り返している。新しいものを作るには、古くからあるものと新しい価値観を掛け合わせる……そんな時代が来ていると思っています。しかも、クリエイティブを職にしている人のすぐそばに、趣味で同じクオリティのものを作る人がいる。タレントが絵画を描いたり、職の垣根を超えてクリエイターになる人も増えています。SNSで誰でも作品を発表する土台が定着してるので、本気で探せば似たような絵がごろごろ見つかったりもしますね。だからこそ、同じ印象の絵だったらこの人に頼みたいって思われる人になりたいです。私と同じような要素を扱って絵を描く人はごまんといます。でもそこで私を選んで頂くにはどうするべきなのかと常に考えていて。自分がどこに所属するのか、どこで作品を発表するのか、どういうメッセージを込めて作品を作るのか、自身がどういう外見でいるべきか、どういう意思を言葉で表現するのか。作品だけじゃなく作家像にまつわる全部のことを意識して選んで組み合わせる方法でブランドを作っていかないと、絵柄だけだと個性を確立するのが難しいんじゃないかと思います。

だから、私の場合は、デザイン科で学んだ事を絵画に活かすことで面白くならないだろうかとか、美少女というありふれたモチーフにどんなメッセージを込めて描いたら差別化になるかとか……そうして複合的に自分の個性やオリジナリティを出そうとしています。モデルやタレントさんに関しても、本人のヴィジュアルの良し悪しに関わらず、どういったところで活動しているのかが重要視されたり、それこそイメージの悪いタレントさんがCMに起用できないみたいに、自分がどう活動するか、それがどう影響するかを常に考えて動いています。……私も含め、これから活動される方はそういう気の抜けない環境を生きていかないといけないので、中々大変だと思います。

 

-プロ意識に関するお話がお伺い出来て何よりです。ある種シーンとして戦国時代に突入している中で、細川様の今後の目標を教えて下さい。

 

細川成美 :自分の絵を本の装丁に使われたいですね!例えば、自分の好きなタレントさんを、広告、CMなど身の回りで見かけると嬉しくなることってあると思うんですよ。自分の好きなものを、より公に認められている感じがするというか……私もそういう所に作品が露出できる存在になりたいですね。今はSNSで作品を発表することが多いですがネットだけでは絶対にダメで、同時にアーバンギャルドさんの仕事のように、より現実味を帯びてくる仕事を充実させることが目標です。
それこそ私がSNSと展示を絶対に並行してやっているのも、自分の存在を現実と乖離させないためなので、できる限り現実に作品が使われているところを私のファンに見せられたら嬉しいなと思ってますね。

あとは、人形がすごく好きなので、人形関連の仕事をしてみたいです。少し前にスーパードルフィーと中原淳一さんのイラストレーションがコラボしているのを見て……最高だな、と実感してから、こういうことを将来やりたいとずっと思っています。何か人形関係の仕事の話が無いかなと探しているところです。もしこれを見た方でその関係の方がいれば、是非お声がけ下さい!

 

-良いご縁に恵まれると良いですね!それでは、今後の予定を教えて下さい。

 

細川成美 : 1つ目は、今年は多摩美で芸術祭が行われるんですけど、そちらに出展する予定が決まっています。2つ目は卒業制作に従事する事ですね。

3つ目は、今年度の4月にクマ財団の2期生に応募したんですけど、コロプラの人がやってる奨学金の制度があって、作品とポートフォリオを提出して通った50人が奨学金をもらえるんですね。それに晴れて合格しまして、その成果物を、2019年度の3月にスパイラルガーデンのホールで展示する予定があります。その3つが大きいイベントですね。

 

-今回は諸々ご回答いただきましてありがとうございました!それでは最後に、これから絵筆を取ろうと考えている方へメッセージをどうぞ。

 

細川成美 : 評価や客観視をまずは除いて、最初は好きなものにストレートでいることが一番楽しいと思います。

そしてもう1つ、継続的に作品を好いてくれてくれる人を大切にしてほしいです。自分が最近実感することの一つに、私は本当に人に恵まれているな、というのがあります。SNSが発展して、自分の表現を好んでくれる人が周りには増えましたが、同時にフォロワーは入れ替わりが激しくて関係が切れることも多くなりました。私がTwitterを始めたのはおよそ6年前、その当時からずっとフォローしてくれてる人が結構いるんです。絵で食べていく事は死活問題レベルで難しいことなので、私自身大学出るまでにtwitterのフォロワーが20000行かなかったら潔く辞めるつもりでいました。その子達にフォローされていた6年間、私の創作活動を見て、応援して、継続的にリプライを送ってくれて……思えば彼らの存在は私が歩む上で大きな支えになっていて、彼らがいなかったら成し遂げられなかったこともあったはずだと思います。ずっと自分を見ててくれる人たちにはそうそう出会えるものじゃないので、もし周りにいたら大切にしてください!

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