細川成美 インタビュー

細川成美 インタビュー

細川成美 : 決定的だったのが、小学生時代に夢中になった球体関節人形です。当時『月刊コミックバーズ』で連載されてた『Rozen Maiden』。あれを小学生の時に読んで……あれがきっかけで少女人形に夢中になったんです。手首などの関節に球体がはめられてて、動かせるようになってるんですよ、顔がリアルなのは言わずもがな、より人間らしい動きも再現が可能になっています。

ドールの話をしますと、その当時、一時の人形ブーム的なものが少なからずあって、人形人気が今より高かったように思います。日本で認知度の高いドールのブランド、スーパードルフィーやユノアクルス、それ以外に韓国ドールのブランドも調べていました。また『Dolly*Dolly』っていうドール専門雑誌やスーパードルフィーのパーフェクトカタログを買い漁ったり、すごく技術力の高い個人が自分独自のメイクを施した人形のブログなども追っていて……それこそドール関連のイベントにも行っていました。

名古屋にアイドールっていうドールのイベントがあって、デザインフェスタとかコミティアのドール版みたいなものですね。ドールに関して、作った服や靴とか、カスタムした人形自体を売ってるだとか、ドール愛に溢れた人達が集まるイベントなんですよ。話が長くなっちゃいましたが……人形から一番影響受けているのかなと感じています…。そのぐらいすごく好きだったんです!球体関節人形にハマって、それをどんどん調べていったら、最終的にはどうやらビスクドールというものがあるってことに行き着きまして。

ビスクドールって19世紀ぐらいのヨーロッパ貴族が持つような陶器で出来た人形のことなんですけど、今作られているものは顔がリアルの少女に寄せられたものも多いんです。中でも、恋月姫さんや吉田良さんというビスクドールの作家さんが好きでした。吉田良さんの作品は唇の隙間から見える前歯まで作られていたりするんですよ。私の絵でもあえて口の中を描いて歯にハイライトを入れたものが登場するんですけど、これの影響です。人の手でここまで人間の顔が再現可能なんだと本当に感動してしまって。人形の中には残酷さや痛みを内包したようなものも多いんですけど、そういうのはあまり好きではなくて、個人的には純粋に美しいものがすごく好きなんですよね。そういう人形の顔や比率を模写していた時もあって、顔のリアリティに関して結構影響受けてる可能性がありますね。

 

-今のお話から、細川様自身からの愛もすごく伝わってきました!

 

細川成美 : ありがとうございます(笑)。実際に私も1体持っているんですよ。自分の理想的な少女人形を持ち歩くじゃないけど、一緒に連れてみたいなと思いまして。対人コミュニケーションが苦手な自分にとっては、自分と同じ人の形をしてるとっつきやすさがありつつ、でも人じゃないところが安心できるポイントなんだと思います。人形は感情を持たないから、温かい言葉を投げてくれるわけではないけど……反対に何かを言い返してくるわけでもない、自分を否定することがない、そういう優しい沈黙みたいなものが自分にとって居心地よくて、ある種の救いや、「私だけの」を約束してくれる心の拠り所のように感じています。そんなところに魅了されて、自分の好きな髪型や格好をさせた少女を描き始めました。この気持ちは今も変わらないですね。人形みたいに、誰かの心の隙間にするっと入り込むような……そういう女の子が描けるといいなと思ってます。

 

-ちなみに、普段の執筆時に気をつけていらっしゃる事はありますか?

 

細川成美 : 私の作品のスタンスは、”男性にも女性にも愛される現代の大和撫子”というもので。一つは少女にちゃんと知性や品性を反映させるという事をモットーにしていますね。だから、売る目的で変に施される色気や露出、媚びた表情は絶対ご法度にしています。男女間では特に美に対する認識はすれ違い、一致しない部分が多いんですけど、男の子がかわいいと思う女の子の中でも、女の子が不快に思わない女の子っているじゃないですか。もともと少年漫画を読んでいたこともあって女の子の好みは男性寄りな方だと自負しているので、そこで、女性が見て不快に思わないものを描く事を考えた時に、やっぱり品とか、ある程度知性のある表情を入れた方がいいんだろうなと思ったんですよね。

もう一つは絵画を描いていて、どこまで説明するかということに気を使っています。表情を付け過ぎないという所ですね。自分の作品を「美少女画」と自分で銘打ってるんですけど、その醍醐味は「この子はどんな風に笑ったり泣いたりするんだろうか?」と想像する事だと思っているんですよ。ストレートに笑顔や泣き顔の表情を描いてしまうと、それが正解になってしまうので、もう少し見た人が想像を膨らませる余地を残す為に、あえて深く感情を加えないようにしています。その代わり、画面を構成する時の構図や服や髪型を選ぶ時に、わりかしその子たちの個性や性格をイメージしやすいように、意図的にモチーフを選んでいます。

 

-独自の美学をお聞き出来て何よりです。普段、一つの作品が完成するまでに、平均してどれくらいの時間を費やされますか?

 

細川成美 : ものによりけりで、サイズと人数によって変動しますね。例えば、人数が1人で、サイズが小さければ小さいほど時間は早くなります。例えばアーバンギャルドさんの鬱フェスのビジュアルは、6-7人の女の子がいるのでかなり時間がかかりましたね。それこそ、色を塗るまでに2週間くらいかかってますね。あと、今年やった展示のメインビジュアルは被写体が1人なんですけど、サイズが大きくて。この場合も2週間くらいかかりましたね。ただ、平均すると、いつもは2日ぐらいで制作してますね。

 

-直近ですとあの(ゆるめるモ!)様のポートレートを描かれていらっしゃいましたよね。こちらを描かれた時は如何でしたか?

細川成美 : あれは本当に難しくて。打ち合わせの時に本人にも伝えたんですけど、あのちゃんって良い意味でものすごく顔に癖が無いんですよ。写真に写ってる彼女の顔のどの陰影を拾うかをずっと悩んでいました。そこを忠実に拾えないと、本当に少しの違いで似なくなっちゃうんです。なのでこの作品は本当に時間がかかりましたね。あとは、彼女が出演している動画とか、Twitterでアップされた写真とか、本人の宣材写真をチェックしたんですけど、どれも不思議と全く顔や表情が違っているんですよ。みんなが思っているあのちゃんらしさが、自分の手元の取材して撮影させていいただいた資料の写真を見ても出てないんです。だから、資料はあのちゃんの顔の造形を正確に描くために見て、それ以外の多分ファンはこういうイメージで見てるんだろうなっていうフィルターを見つけるためにTwitterのメディア欄をものすごく漁りました。

-同じく音楽アーティスト様のポートレートですと、黒宮れい(BRATS)様も描かれていらっしゃいますよね。

細川成美 : 黒宮れいちゃんは、結構顔に特徴のある子なので、そこをきちんと拾うことで、似せられる顔のタイプでした。あの時は、マネージャーさんが撮った奇跡の1枚の写真……ちょうど私が描いた絵のあの恰好で写ってる写真があったんです。思わず「これはかわいい……!」と思って、その写真をもとに私が突発的に描いたものを、ギャラリーのオーナーさんを通して連絡してもらって、「展示していいですか?」って許可を取ってもらったんです。その奇跡の1枚が本当にかわいくて、素晴らしくて、そこをどうにか出せないかなと思って……いつもセーラーの襟を真っ青にしてるんですけど、その時だけは本当にその写真の端々の色味を忠実に拾う意識で描きました。

 

-両者共に、各人の個性が出ていて、なおかつ一発で細川様の絵だとわかるマスターピースだと思います。ちなみに、細川様が画家として初めて描かれた作品はどの様な作品になりますか?

 

細川成美 : これはいろいろありまして、結構どれにしようか悩んだんですけど……たぶんこれかなと思って。この鼻血が出ている女の子シリーズです。

れがおそらく、一番最初にアクリルで描いた作品ですね。「恍惚」というタイトルの作品で、私のホームページにも載っています。もともと私はデジタルで描いてたんですけど、ギャラリーに行ってから、「デジタルじゃ売れないからアナログで描きなさい。」って言われて、この作品を描いたんです。2作品あるんですけど、結構サイズが大きくて、赤い服の方がB2、青い服の方がB3サイズになります。

本当は鼻血を垂らすつもりはなくて、普通にアクリルでかわいい女の子を描こうと思ってたんですけど、いざ出来上がってみたら「何か足りないな……?」と思ったんですよ。これはもしかしたらあった方が良いかもしれないと思って、完成した後、搬入する前に鼻血を描き加えてしまいました。搬入した時に「何で鼻血出してるの?」ってすごく心配されてたんですけど(笑)。いざ個展で販売したら、鼻血を出してるのが面白かったみたいで、思いの外コレクターの方が気に入ってくださって、その2つは無事にお迎えが決まりました。初めて描いた絵が売れていくのはすごく印象的な出来事でした。

 

-なるほど。それでは、商業として初めて描いた作品を教えて下さい。

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