冥麿(読み方 : めいまろ)
HP : http://maros2maro.wixsite.com/marosillustration
Twitter : https://twitter.com/_s2_maro
Instagram : https://www.instagram.com/_meimaro/
冥麿女史は1987年生まれ福井県出身、東京在住の画家。マーカー(COPIC)や水墨画にて描かれる彼女の世界観は、女性特有の醜い嫉妬や怨恨がベースに描かれている。猟奇的な雰囲気と静寂が共存し、まるで鋭利な妖刀・禁忌的存在として、見る者の心に深く刻み込まれる。いずれの作品も美醜と凄惨が極限的なバランスで、一つのキャンバスの中に並び立っている。
また、WEB上では勿論の事、数々の展示会(艶惨/GOREDECK等)への参加や、沖縄のメタル・ハードコアバンドilluminatiや東京のブルータルデスメタルバンドUrobilinemiaのアートワーク等で、彼女の事を知ったユーザーも多いはず。
今回、冥麿女史に対し、彼女の生い立ちから絵への目覚め、絵・音楽のルーツ、絵に対する姿勢等を伺うべく、インタビューを実施した。
取材・文・編集 / 宮久保仁貴
-TOPPA!!初登場という事で、まずは冥麿様の自己紹介をお願い致します。
冥麿 : はじめまして、画家の冥麿(めいまろ)と申します。まずこの度の貴重な機会を下さり有難うございます。1987年福井県に生まれて以後、ずっと東京に住んでおります。中学・高校と私立女子校に通い、その後建築設計系の短大へ。二十歳で設計事務所に勤務、転職を経て今は両親の会社でインテリアプランナー/デザイナー、建築設計士として働いています。
–いつから絵を描く事に目覚められたのでしょうか?
冥麿 : 幼少期から絵を描くことが好きで画家に憧れていました。しかし「生活していく」という事を考えた結果、理系を選択、建築設計の道に進みました。連日徹夜など日常的で拘束時間も仕事量も学びも多く、絵を描くことを完全に忘れていましたが……とあるきっかけでふと創作を始め、初めてのグループ展示参加が2014年6月でした。
–そのきっかけとは、一体どのようなものだったのでしょうか?
冥麿 : 元々絵を描くのが好きでしたので年賀状等の身内用はたまに描いていましたが……具体的な事を申し上げると、2013年の夏コミでのことです。友人に誘われて初めて(※勿論一般参加で)行きました。建物の中も外も恐ろしい暑さでしたが、それ以上に感じたのは出展者の作品に対する熱意でした。ジャンル・上手い下手を問わず、皆キラキラした目で自作の商品を販売している姿に「私も何か自分で作りたい!」と感動したのがきっかけだと思います。Twitterでの絵の公開を始め、翌年の1月にイラストを初めて同人誌に寄稿しました。
その後、二次創作ではなくオリジナルで活動したいと思い、同年の6月に画廊企画展へ参加し、今に至ります。それから色々な展示を経て、少しずつ依頼もいただけるようになりました。メインは創作の展示ですが、展示や依頼の合間をみてオリジナルアパレルのデザインもしています。2017年頃から特に依頼や展示のお誘いが増え、時間の折り合いが難しくなり仕事を減らしましたが辞めてはいません。ですので仕事しつつ絵を描いている……という感じで今に至ります。
–ありがとうございます。続いては、冥麿様の絵のルーツに関して触れていければ、と思います。ホラーやグロテスク、エロティックなものがモチーフになっている作品が多いですが、どの様な方々の影響を受けられたのでしょうか?
冥麿 : 父親の影響でホラー漫画を幼少期から読んでいたのですが、恐らくそれがホラー・グロテスク好きの発端だと思います。特に好きなのは楳図かずお氏の『洗礼』という漫画です。残虐さは楳図氏の他の作品より控えめですが、”人間の醜いと分かっていながらも逃げられない感情描写”が、今の私の作品に深く影響していると思います。絵画では伊藤若冲、山本タカト氏の存在がとても大きいです。恐ろしいほどの繊細さ、独特かつ美しい空間を持つ構図は観るたびに私を初心にかえします。モチーフが何であれ、”美しさ”を目指すようになったのは山本タカト氏作品の影響です。
そして、「何故、こういった絵を描くようになったのか?」と聞かれると答えに困るのですが……紙とペンを渡されたら何となく花や星を落書きするように、私はこういった世界をただ描きたかったのだと思います。嫉妬・憎悪などの負の感情や臓腑はもっと表に出てもいいんじゃないかな……とも。全ての人間が持っているものですからね。あとは、私自身が異様に嫉妬深い性格なので……描く度に自分の中の黒い部分を吐き出せた気がして。少し楽になるのと同時に、同じような性(さが)を持つ方の救済になったら……とも思います。
–その思いこそ、正に芸術活動の原理だと思います。ちなみに、尊敬されていらっしゃる方も教えていただけますでしょうか。
冥麿 : 画家として尊敬しているのは江川敏弘氏です。大学生からメタルを聴くようになり、ある日「このジャケット・ロゴ、日本人が描いている!」と気づき、とても驚いた事を今でも覚えています。(※それまでは、勝手に外国人が全部描いていると思い込んでいました)。恥ずかしながら、それが江川氏だったと知ったのは少し後になるのですが。彼の作品は勿論ですが、画家としての姿勢は常に勉強させられます。まだ創作活動を初めて間もない私に「何かひとつでいいから世界一を目指して頑張ってみて。気づいた時には日本一になっているから。」と真っ直ぐ面と向かってくださった言葉は今もずっと大切にしています。
あとは父かな……建築関係の手描きパースでは父が日本一だと勝手に思っています(笑)。絵もとても上手く、私が幼稚園の時に描いてもらった恐竜の絵は今でも大切に持っています。母はよく私が小さい頃に描いた絵を褒めてくれましたが、父から褒められた記憶は無いですね。
–江川様に繋がる話ですが、冥麿様自身も音楽系のアートワークも手がけていらっしゃいますね。まずは、そんな冥麿様の音楽的ルーツを教えて下さい。
冥麿 : 音楽に興味を持ち出したのは遅めの中学生で……女子校でしたので周りはジャニーズファンが多く、私含め少数派はGLAY等を聴いていました。その後英語の授業でBilly Joelを知ってから洋楽を聴き出し、インターネットを使うようになってからANGRAやGAMMA RAYなどメロディックなメタルを知り……継続してロック/メタルをよく聴いています。10年以上たった今でもANGRAの元Vo、Andre Matos氏は私にとって神様です!
……と色々書きましたが、物心つくかつかないかという頃、私と弟で留守番する際に繰り返し観ていたビデオテープに入っていた聖飢魔IIのMVが一番最初です(笑)。
そして、作品に大きく影響を与えているのと思うのはMUCCです。本来蔑まれる負の感情を堂々と歌い上げていて……落ち込んだときにこそあえて聴き、こんな気持ちになるのは私だけじゃない……と救われていました。私の個展タイトルが常に漢字2文字なのも彼らの曲タイトルの影響です。
–ちなみにMUCCのアルバムだとどの作品がお好きですか?
冥麿 : 『アンティーク』から『極彩』までは本当に何回聴いたかわからないくらい、また今もずっと聴いているのでどれも大好きすぎてとても選べません……なんとか5曲選ぶとしたら「焼け跡」「死して塊」「水槽」「流星」「大嫌い」でしょうか。それも明日になったら変わりそうです(笑)。「流星」は私がムックを好きになったきっかけの曲で……だからそもそもバンドの存在を知ったのが結構遅かったりします。先程あげた5曲の中で歌詞は一番普遍的なのですが、歌声が本当に素敵でそこからどっぷりでした。遡るにつれて歌詞が恐ろしく暗い曲を多々知り更に好きになって……気付いたときにはCD集めるのに必死でした(笑)。MUCCのCDジャケットを山本タカト氏が描かれたと知った時は夢のコラボ過ぎて危うく心臓が止まるところでした!
他にもアニメ・ゲームが大好きなので、アニソンやゲームBGMもよく聴きます。音楽ゲームで有名な「あさき」の楽曲は私の世界観にとても深く影響しています。湿度が高く重たい和の空気感が大好きです。そして、夫が音楽大好き(確かCD6000枚以上あります…)で、理解があるどころか新旧問わず情報を常に与えてくれるのでありがたいです。
–ありがとうございます。ちなみに、冥麿様が一番初めに手がけられたアートワークは一体何だったのでしょうか。
冥麿 : 仕事としてはアメリカのインダストリアルノイズユニットL’eclipse Nueのロゴが最初です。L’eclipse NueのDanielさんが私の絵を気に入ってくださったのがきっかけで、その後CDジャケットも描かせていただきました。ノイズは本当に未知のジャンルだったのでとにかく色々聴き漁りました。
とても気に入ってくださっていて、胸にロゴのタトゥーをいれた写真をくれた時はとても感動しました。同時に「絵はジャンルも言葉も海も越えられる」と実感した瞬間でもあります。
CDジャケットの最初の仕事は、日本のブルータルデスメタルバンドUrobilinemiaでした。Vo.のGoregrind氏とは以前より知り合いだったので「気を遣って依頼してくれてるんじゃないの?無理はダメだからね!」とウザいくらい念押ししたのを覚えてます(笑)。数年前の絵ですが、特に海外のお客様は今もこのイラストを気に入ってくださっている方が多いように感じます。中の曲もめちゃくちゃカッコいいですからね!数少ない私の貴重な代表作の一つ……と言いたいところです。
–エクストリームと美しさのせめぎ合いがギリギリの所で均衡を保っていますね……!それでは、普段制作時において心がけている事を教えて下さい。
冥麿 : 常に「これが遺作になっても構わない」よう仕上げることです。知名度的にどうこうなるわけではないのですが、ただ中途半端な作品が最後になったら自分が自分を許せない……成仏できないなぁと(笑)。周囲からはよく完璧主義っぽいと言われるのですが、そうではなくただ結果重視のド級ネガティブ思考なだけなのです。想像の期待はせず常に最悪の事態を考えて動いていることが殆どです。
–だからこそ、非常に精緻な作品が出来上がるのかもしれませんね。
冥麿 : この他、”グループ展に出すなら全力で仕上げる事”も意識しています。嫌でも他者の作品と比べられますから、手を抜いた作品は全てにマイナスでしかありません。自分へは勿論、会場の雰囲気へも、そして私の作品を買ってくださった過去全てのお客様へも。グループ展は戦場!当たって砕けろ!は表面上、内心は砕く気があっても砕ける気は一切ありません……というと超強気な人のようですが、逆にそう言える程の気持ちを込めてやっとなんとか完成まで持っていっているというイメージです。他の作家の足を引っ張りたくないですから。
あとは「描きたいものを描く」「必ず作品ごとに1箇所は改善させる」事でしょうか。ジャンル的に肩身が狭く需要も少ないのですが……自分を偽った作品では誰にも響きませんし、誰とも闘えませんから。また作家は……というか人間は満足したら終わりだと思っているので向上心は常時意識しています。
–クリエイター意識に関するお話がお聞き出来て幸いです。さて、普段の制作はどの様なツールで進められていらっしゃるのでしょうか。
冥麿 : 今はマーカー画と中国墨彩画の2パターンで創作しております。ただ、最初はCOPIC(コピック)を使用したマーカー画のみでした。父が設計士&私も建築系学校へ行った為、一番身近な画材がCOPICでした。デザインやコミックイラストでよく使われているので見たことある方も多いと思います。学校で手軽に使えたのと、父がくれたCOPICが何となくかっこいい!と思ったから……それがCOPICを使うようになったほぼ全ての理由です(笑)。
イラスト・デザイン以外にも使えるぞ!ということをアピールしたくてTwitter上に投稿した絵に反応してくださったのが、双子のCOPIC応援キャラクター「コピックツインズ」の一人トウマくん(※株式会社トゥーマーカープロダクツ 大森氏)でした。トウマくんはTwitter上でCOPIC情報の告知の他、リプライへの応答も行っています。COPICユーザーは知っている方が多いのではないでしょうか。その後色々ご縁もあり、公式サイトにも私の作品を掲載していただきました。
コピック公式サイト(コピックチャオ36色セットD紹介ページ)
https://copic.jp/works/maro/
コピックツインズ公式サイト
https://copic.jp/twins/
しばらくマーカー画だけで活動していたのですが、展示の機会が増えるにつれ、染料故に退色が早いという理由で絵柄の内容以前に画材で展示販売を断られる事がでてきました。純粋に絵で勝負できないこと・好きな画材を認めてもらえないことが悔しくて……何度も大森氏に相談し、何度も無茶なお願いをし、何度も一緒に悩みました。その現状を自分でも打破したくて始めたのが、元から興味のあった中国墨彩画です。墨で描いた作品販売(とマーカー画を一緒に展示)なら問題ないでしょ?と。始めたのは2016年の終り頃、中国人の先生の元へ定期的に習いに行っています。今となってはマーカー画と同じく大切な相方です。
デジタルは媒体にかかわらず何かしら印刷する時にアナログ絵を調整する程度が殆どで、デジタルだけということは滅多にありません。使うソフトは主にPhotoShop・ClipStudioです。
–その様な経緯があったのですね。直近の活動について諸々教えて頂ければ、と思います。
冥麿 : 今年の1月は昨年に続きロサンゼルス最大のアートイベントLA ART SHOW2018に出展しました。
また、7月は新たにLA ANIME EXPO2018に出展、そして大森氏を含む関係者の方々にご協力いただきCOPICを使用した実演を行いました。昨年末に大阪の乙画廊にて個展をさせていただいたのを目処に、今年からは海外での活動を重視して動いております。
仕事としましては、沖縄メタルコアバンドilluminatiのCDジャケットデザインが発表できる範囲内での直近でしょうか。以前よりTwitterで軽く交流はありましたが、実際にご相談いただいたのは東京のライブでお会いした後でした。まだガッツリ働いていた当時、沖縄のバンドは滅多に観られないぞ!と出張先の石川県からダッシュで会場に向かった記憶があります。ライブ後、メンバーのK-9(Vo)氏・Shota(Gt)氏と直にお話しすることができました。そこで改めてお互いの作品(音楽・絵)に対する認識や価値観がしっくりきたといいますか……「この人(達)なら大丈夫」と感じられたのだと思います。その後、正式にご依頼を頂きました。ご相談頂いたのは1年程以上の話ですが、私にとっては今も暖かい思い出で大切な経験です。沖縄行ったら必ず会いに行きたいですね。
イラスト提供:冥麿 / デザイン:illuminati
–あのアートワークはバンドの世界観を表した快作だと思います。この他、前衛派珈琲処マッチングモヲルとのコラボ作品『幽冥タイツ』を作成されたとの思うのですが、こちらのコラボのきっかけを教えて下さい。
冥麿 : 前衛派珈琲処マッチングモヲル(以降、マチモ)のオーナーBen Isei氏からお話を頂いたのがきっかけです。 マチモでは以前よりとても変わったタイツを作家とコラボ制作・販売しており、私も知っていたのですが……まさかお声掛けいただけるとは思ってもいなかったのでとても嬉しかったです。「彼女が履いていたら萎えちゃうくらいエグいのを作ろうよ!」と(笑)。 私自身タイツは好きでよく履くのですが、柄物は苦手で……というのは柄が伸びて歪んで、太さが強調されるのですよね。 なので「私らしいエグさ×総柄タイツだけど足が細く見える」デザインを考えました。 和彫りデザインのせいかLAでは特に評判がよく、履いて外に出ると必ず声を掛けられます。 現時点で再販予定はないそうなので、是非チェックしてみてください!
購入URL : https://matchingmole.shopselect.net/items/4086918
–話は変わりますが、最近触れた中で感銘を受けたアーティストを教えて下さい。
冥麿 : 最近ですと……画家の桑原聖美女史、雫石知之女史でしょうか。最近展示に行って心底感動したのは特にこの2名です。桑原女史の絹に描かれた透き通るような(実際に透き通っているものもある)作品は、基本的な技法・手順は分かっていてもどう描いたらそうなるのか理解できない程に滑らかで、恐ろしく緻密で……でも登場する女性像の生命力がとても力強くて圧倒されられます。特に「白色」の存在感と強さは私が大好きな伊藤若冲を連想させます。作品は展示でご一緒させていただいているのですがまだお話したことがなく……いつかお会いできたらと願っています。
そして、この取材のお話を頂いた直後に行った展示が、雫石女史も参加しているグループ展でした。知り合ったのは15年程前ですがそれから色々有り、今はお互いの展示を行き来する仲です。彼女の作品はとにかく自身の意志に忠実且つ間違いない画力で真正面から観る人にぶつけてきます。今作は特に凄く、1mを軽く超えるキャンバス(50号)に大きな男性器と自身をモチーフに展開されており。攻めてるなぁ……好きなものに対して本当に揺るぎないなぁ…と感動しきりでした。性器描写はグロテスクなものより更に展示場所も限られるのですが、そんなのお構いなしに描きたいものに真っ直ぐな姿と、どんどん向上される画力・テクニックに憧れます。モチーフは違えどテーマには共通点があるので、いつか一緒に展示させていただけたら……と願っています。お互いに暗いテーマですし色々マズい部分も多いのでかなり場所が限られそうですが(苦笑)。
–いつか主催のグループ展を開けると良いですね。続いては、今まで活動されてきた中で、一番印象深かった出来事を教えて下さい。
冥麿 : 国立新美術館で開催された公募展に応募、展示したときのことです。子どもたちも参加できるようなスペースのある、全年齢の公募展でした。私はずっとこういったジャンルの絵のみを描いていますので…勿論この手の絵を展示しました。勿論、主催には事前に確認の上で、です。
会期中こっそり聞き耳を立てていると、お上品そうなマダム方の「気持ち悪い」「描く意味がわからない」「ただの悪趣味」「迷惑」など……非難轟々(笑)。言われ慣れてますし分かっていたので悲しくはなかったです。でも公募に出すべきではなかった、不快にさせて悪かった、とその瞬間の後悔はありました。
数日後、その展示の授賞式でまさかの準大賞をいただきました。とある教授が私の絵を気に入りプッシュされた、と後から主催に聞きました。勿論そういった繋がりは欲しくとも全く持っていないので……全く面識のない方からの応援にとても驚かされました。そして先程のマダムたちの反応にも驚かされました。準大賞の肩書がついた瞬間、あからさまに褒めだしたんです……。「結局、世間の大半は肩書・経歴なのだ。でもそれを絵で作り上げることは完全に不可能なわけじゃない。」と感じました。学校関連の経歴が全く無いことを気にしていた時期でもあった当時の私にとって、この事はとても大きな支えとなりました。今もずっとこの想いを忘れずに創作を続けています。いつかその方を探し出して心から感謝の気持ちを伝えたいです。
そしてもう一つ……密かに嬉しかったのが、この時初めて父が絵を褒めてくれた瞬間でもあったということでした。
–喜ばしい限りですね!さて、勿論そのような華々しい事もありつつ、近年は多岐に渡る活動をされていらっしゃいますね。諸々の活動を現在振り返ってみると、如何でしたか?また、今後の抱負を教えて下さい。
冥麿 : 年々忙しくなってはいるので悪くはないんじゃないかな……と思いつつ、「もっと出来たんじゃないか?」と思うことが多々あります。「まだ描けたんじゃないの?自分にぬるいんじゃないの?もっと熱くなれよ!」と心の中のにいる某元プロテニスプレイヤーが騒ぎ立てます(笑)。ただ、振り返ってみて後悔しなかった年は無いです。経過より結果派なので……人生自体が経過ですから、死ぬ直前の状況次第でその時満足するかどうかでしょうか。
今後の抱負は……もっと海外での活動を増やしていきたいです。いつか海外個展も開催したいですし。その為にも沢山描いて、そしていつ死んでもいいように目前に全力を尽くすことですね。毎日そうやって生きていたいです。
–ありがとうございます。続いては、近年新たな画家やイラストレーターシーンが日々誕生しているかと思われますが、この事について思う所を語って下さい。
冥麿 : 時間があればスマートフォンやPCで簡単に沢山の絵を高画質で観ることができる時代になりました。良くも悪くも画面越しで完結する瞬間が増えたと思います。そして、デジタルツールの普及によりネット上のデジタルアート作品がとてつもない勢いで増えている中、アナログ絵描きはどうやって魅せていくべきなのか……と考えさせられます。画面越しでは伝えきれない原画の良さをどうやって画面越しに伝え、実際に目でみていただけるようにするには……と。
デジタル・アナログは昔から変に差別されてきましたが、画材が違うだけで根本は同じはずです。若い方々が気軽に参加できるようになったこのご時世、いい方向に切磋琢磨できるんじゃないかな……していかないといけないんだろうな……と思います。
–なるほど。それでは、今後の予定をお教え下さい。
冥麿 : 展示関連は、まず2018年12月1日~16日、大阪のexcubeにて開催されますGORE DECK2018に参加いたします。主催は江川敏弘氏。今回で4回目の参加なのですが、相変わらず毎度緊張します。
GORE DECK 2018 URL : https://www.goredeck.net/
そして、来年は2019年2月9日~、アメリカはロサンゼルスのロングビーチにありますDark Art Emporiumにて開催されます三人展に参加させていただきます。メイン作家ということで大きな壁を頂いているので、今一生懸命描きためている最中です。
三人展主催ギャラリー URL : https://www.darkartemporium.com/
また、個展「告魄-KOKUHAKU-」を、来年の2月にLAで展示する作品のお披露目的な感じで2日間のみ個展開催します。
原画は展示のみですが、数量限定でプリントパネルなど販売予定です。国内発表が最初で最後となる作品が殆どですのでご高覧いただけたら幸いです。私も終日在廊予定です。
【日時】
2019年1月12日(12時~19時)・13日(10時~17時)
【場所】
Gallery Stella (ギャラリー ステラ) / 〒167-0042 東京都杉並区西荻北3-13-11-1F
雑誌関連は、2018年12月号Beautiful Bizarre Magazine、2019年1月号Hi-Fructose Magazineに展示に関する広告を掲載して頂く予定です。
そして、バンドマーチ関連は未発表がまだまだあるので……私自身もそわそわしています(笑)。
–これからの発表が非常に楽しみです。今回はお忙しい中ご回答ありがとうございました。それでは最後に、これから画家/イラストレーター業を始めようと考えている方へのメッセージをどうぞ。
冥麿 : 私が言える立場ではないのですが…(苦笑)。自身にも改めて言い聞かせるべく、3つ、お伝えします。
ひとつ、「始めるに遅いはない」です。限りある時間(命)です。今日から始めましょう?そしたら来年の今日には経歴1年の作家です。私は事あるごとに、もっと早くやっとけばよかった…と自身に嫌気が差して落ち込みますが、それこそ時間の無駄です。
もうひとつ、「自分の好きを信じぬきましょう」。周囲にダサいと言われようが、数年続けたら周りが諦めだします…あいつはもうダサいヤツなんだよ、と。更にそのまま続けたら、ダサいだけど本当にそれが好きな人なんだ、と少しずつ理解されます。多分、もっと続けたらきっとダサいがとれて「好きを突き詰めた人」になると、私は信じています。
最後に、「何かひとつでいいから世界一を目指して頑張ってみて。気づいた時には日本一になっているから」。創作を始めた時から今もずっと、私が一番大事にしている信念です。この言葉を受けた瞬間は世界なんて言うことデカイなぁ…としか思えなかったけれど、今はほんのちょっと違います。信じていたらきっと、あなたにもそんな日が来ます。
このメッセージで少しでも背中を押すことができたら本望です。一緒に頑張りましょう。
Comments are closed, but trackbacks and pingbacks are open.