松村上久郎 インタビュー

松村上久郎 インタビュー

 

 松村上久郎 :私の描く漫画は、漫画と呼ぶには絵本っぽいし、絵本と呼ぶには漫画っぽいんです。その「ちょうどいいところ」を言い当てる単語が日本になかったので“バンド・デシネ”と呼ぶことになりました。まず前提として、日本の漫画とフランス語圏の漫画は随分様子が違ったりします。あちらの漫画、つまりバンド・デシネは、日本人の感覚から言えばむしろ絵本に近かったりします。私はそもそも漫画家になりたかったので漫画を自分で描いてみてはいたのですが、それが日本の商業誌に載っている姿がとんと思い浮かばない。じゃあ、ちょっと変えてバンド・デシネ的に描いてみようと試してみたら、自分の画風・作風とぴったりハマった。気に入ったので、そのままにしているという感じです。

 

そうだったんですね。自身の画風を活かしたコンテンツがバンド・デシネであったと。バンド・デシネ作品としては『ニコの旅』を発刊されています。こちらを制作するに至った経緯をお聞かせください。

 

松村上久郎 :最初は“試行錯誤の苦し紛れで出した”という感じでした。先ほどお答えしたとおり、私は「なんだか日本の漫画に着陸できないなぁ」という漠然とした悩みを何年も抱えておりました。そういうときに、ジャン=ジロー氏の『アルザック』を読みました。あれは1コマをコマ枠からしてフリー・ハンドで書き、内容もあらかじめ決めずに下書きすらせず一気に描き進めるというスタイルで制作された作品です。その大胆でのびのびとしたやり方に感銘を受けましたし、「このやり方がくすぶっている私を変えてくれるかもしれない」と、ある種の直感がありました。ファンの方々に受け入れてもらえるかどうか最後まで不安でしたが、イベントでの反応は予想をはるかに上回って好評でした。そこで初めて自分の「漫画」に自信を持てました。今でも基本的にはそうした作画スタイルでバンド・デシネを制作しております。

 

なるほど、ジャン=ジローの『アルザック』が一種のインスピレーションの源になっているんですね。『ニコの旅』は「ロボットからうさぎさんまで」というコンセプトが凝縮された作品だと思います。その他に作品のコンセプトや見どころがありましたら教えてください。

 

松村上久郎 :基本的に「めんこい(北海道弁で“かわいい”の意味)物語だな~」と気楽に読んでいただけたら嬉しいです。人は死なないし、血も出ない。みんなに何かめんこい悩みがあって、それをめんこく解決していく、そんなテンションの作品です。ただ私は、私たちが現実で抱えているような悩みや不安を、あくまでもあたたかい目線で描きたいし、そのあたたかい雰囲気の中でキャラクターが成長していくという良心的な作品作りがしたい。そういうところをファンの方には見て欲しいなと思っています。良心的な展開というのがよくわからない方はアニメ『けものフレンズ』の第1期みたいなどこまでも優しい感じをイメージしてくださればある程度近いと思います。

 

めんこい、良い言葉です。ちなみにですが、松村上久郎さん自身が好きな漫画や最近ハマっている漫画はありますか?

 

松村上久郎 :好きな漫画は藤原カムイさんの『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』で、最近はまっている漫画は野田サトルさんの『ゴールデンカムイ』です。前者は「黒インクだけでどうしてこんなにすごい画面が描けるんだろう!?」と小学生ながらびっくりした最初の作品で、漫画家になりたいと思わせてくれた作品です。後者はなんとなく読み始めましたが、あっという間に最新刊まで読んでしまいました。あの漫画は金塊をめぐったサバイバル漫画なので、それなりに暴力的だったりグロテスクなシーンはあるのですが、「読者にダメージがいきすぎないように」絶妙にバランスをとっているフシがあります。ギャグをブッこむタイミングも絶妙で、読者が必要以上に深刻な感じにならないようにうまく空気を入れる。計算し尽くされている。どうなってしまうのかとハラハラさせながらもどこか安心して読めるというあのバランス感覚は脱帽です。見習いたいです。

 

奇しくも藤原カムイさんのカムイはアイヌ語で、『ゴールデンカムイ』もアイヌ民族を題材にされていたりとアイヌが共通項となっておりますね。2015年ころからYouTubeチャンネルを開設されて、絵の講座配信をされていますよね? また、ワークショップ「万年筆で描いてみる!ごちゃっとめんこい世界の描き方」の講師を務めていたり、『心にのこる絵の描き方』や『辛くならない絵の描き方』などの書籍を発行されていたり、ご自身の技術を多くの人に広める姿勢が素敵だと思います。これらに至った経緯を教えてください。まずはYouTubeチャンネルを開設について。

 

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