橋爪もも インタビュー

橋爪もも インタビュー

橋爪もも : 今回のアルバムのテーマとして、「押し殺してきた本音と謝罪」っていう言葉をテーマに綴った曲が多いんですよ。最近話題にも取り上げられるLGBTだとか、いろんな方面から、何かを隠してしまった人たちのことを歌っていて。なので、ジャケット写真に関しても「本音を言う」という所でキーアイコンになるのが耳でも鼻でもなく、口かなって思っていて。口っていうのはマストでした。

ただ、実際本音っていうのはなかなか言えないじゃないですか。グッとこらえることの方が多いと思うので、それを初めて口にしようっていうその気持ちも尊いし、どんなに汚い言葉であっても、その人の本心っていうのは尊いものだと思います。なので、口だけでなく、尊いものの象徴として花を使わせてもらった結果、こういったタイトルと、ジャケットになりました。ジャケットの原案は、イラストを私が描かせてもらって、「こういう風にしたいんですけど。」と提案させていただきました。

 

タイトルもさることながら、非常に目を惹くアートワークが完成しましたね。さて、本作の楽曲ですが、ハードなナンバーの「自己愛性障害」から、バレンタインの時期の女の子の機微を冒頭はポエトリーで、そして優しく歌い上げた「甘い娘」等、非常にバランス豊かな一枚が仕上がりましたね。本作の作詞作曲において、アイデアが湧いてきたタイミングを教えて下さい。

 

橋爪もも : 今回のアルバムの為に書き下ろした楽曲は、予約特典CDを含めると4曲ですね。その4曲に関しては過去の楽曲に誘発されて書き上げました。中には、シンガーソングライターとして活動を始めて一番最初に作詞・作曲した曲、9曲目の「ヒーロー」も入っています。それらを集めた時に、「押し殺した本音と謝罪」っていうテーマが固まってきたんです。だから、書き下ろした4曲はそれに沿って書きました。「本音とは醜くも尊い」が一番最後に書いた曲です。アルバムのまとめになってる曲だと思います。

 

個人的には、聴く人によって印象が変わると共に、いろんな状況に応じて聴ける一枚だと思いました。例えば、ダウナーになっている時に元気付けられる曲があったり、あるいは恋愛の機微だとか、「甘い娘」とかだと特定の年代の女性にすごく刺さる曲だと思います。

 

橋爪もも : 「甘い娘」は女の子が女の子に恋をした曲なんですよ。最初、歌詞を一見すると「何言ってるんだろう?」って感じなんですけど、よくよく読んでもらえたら嬉しい曲になっています。

一貫して言えるのは、私自身のメンタルもそうなんですけど、ある界隈の人たちにすごく届けたいっていう気持ちがあって。もちろんそこに限った話でなくて、みんな人生で大なり小なり後悔とか、取り返しのつかないことをしてしまったとか、今なら相手を思いやれるのにとか……そういう気持ちがあると思うんです。そういう気持ちの真っ最中の方にも届けたいですし、今は未来を向いて歩いてる方にもちょっと思い出してもらって、それで今一緒にいる、手の届く範囲の方を大事にしようって思い直すきっかけになったりとか、あるいは背中をさすったりだとかが出来たらいいなという気持ちで作詞・作曲をしています。

今回、分母を広げる為にもたくさんの方に聴いていただいて、背中を押すとまではいかないですけど、手助けが出来ていたらいいな、という気持ちで向き合いました。

 

また、「自己愛性障害」は日高央(THE STARBEMS)さんによるプロデュースとお聞きしました。「MUSIC にゅっと。」オーディション以来からの仲かと思いますが、今回共に制作活動を進められた際の裏話を教えて下さい。

 

橋爪もも : まず、日高さんとの馴れ初めから話すと、「MUSICにゅっと。」っていう番組でオーディションがあって。そこのお誘いメールが偶然来たので、応募してみたらそこで日高さんに出会ったんです。オーディションには落ちたのに……何故かレギュラーになって、1年半ぐらいずっと日高さんとご一緒する機会を頂いたんですね。日高さんにはいろいろ教えてもらって、私の師匠のような感じです。ミュージシャンとして大人にさせてもらったなと思います。

今回、こういうアルバムを作れる機会があり、「アレンジャーさんはどうしようかな?」と思った時、「自己愛性障害」が一番激しい曲なので、日高さんにパンクロックにしてもらいたいな!と思い、お願いしました。当時から、「お前はAマイナーみたいな暗いコードを使いすぎだ。」とか、「(曲の幅を広げるためにも)負の感情たっぷりな歌詞ばっかり、そういうの以外も書いてみろよ。」と日高さんには言われていて。そこから、実際書くことが出来るようになって感謝してるんですけど、久しぶりに会って今回の「自己愛性障害」を聴いてもらったら、「何も変わってないじゃないか。」って言われました(笑)。でも、「変わらずにそのままフルアルバムをリリースすることが出来るようになったのは、すごい事だね。」とも言ってもらえて!快くアレンジをしていただきました。

 

 

なるほど!ちなみに、普段作詞作曲においてどのようなプロセスを取られる事が多いですか?

 

橋爪もも : だいたい一貫してるのは、曲に主人公がいることですね。その主人公はお客さんであったり、架空の人物だったりするんですけど、その設定を作るんですよ。主人公はどういう気持ちで、どういう人と関わっていて、どういう環境にいるのか、ということをまず作ってから作曲を始めます。歌詞を書く時は、その子たちの物語を綴っていって、そこからメロディに当てはまるように削っていったり、「この言葉だったらこの一言で補完出来るな。」っていうのがあったらそれに置き換えたりして。まずは設定作りから始めてますね。

 

わかりました。続いては今回の制作時の裏話を教えて下さい。スムーズに進みましたか?

 

橋爪もも : びっくりした事があったんですよ。ライブではいつも癖のある歌い方で感情的に歌っているんですけど、今回はいつもと違う方に歌の方をディレクションしていただいて。「こう歌おう。」と決めてレコーディングに挑んだ時に、それが全部ダメだったんです(笑)。アルバムを何度も聴いてもらいたいっていうのがあって、「もうちょっとあっさり目に歌おう。」ということで。癖を抑えて歌うのがものすごく大変でした。どうしても出ちゃうものなので、何度も歌い直しましたね。ライブで何度も歌い込んでる曲であっても大変でした。

「甘い娘」レコーディングの際は、この曲の歌詞は全体的に甘いんですけど、「ハムハムしたいの」という歌詞部分の歌い直しの時に、大の大人の人が「もう1ハムハムいこうか。」みたいに言ったりして、ちょっと異様な空間でした(笑)。「触れてみたいの、もう1回。」とか、何かセクハラのようなものを受けている感覚になったりもしつつ「あぁ、これ、自分の歌詞か。」と思って我に返るみたいな(笑)。ちょっと面白い状況でした。

 

不思議な感覚ですね()。また、本作からはMV「バレリーナ」が公開されましたね。

 

 

橋爪もも : 「バレリーナ」は今回のアルバムの肝になっている曲なんです。

今回初めての試みで、私自身は出演せずに、全編アニメーション作品になっています。この「バレリーナ」も主人公の女の子がいて、その子が成人した時に、あまり報われなかった自分の幼少期を救いたいという気持ちで踊り続ける……そんなテーマがあります。もちろん、「バレリーナ」っていうステージは職場であったり学校であったり、ご自身の状況に当てはめて聴いてもらいたいです。大人になってもがく女性が、報われない女の子、(幼少期の自分を……)「あの子を救わなければ。」と立ち上がる曲なんですけど、そのストーリーを補完できるものってなんだろうって思った時に、私が出て歌っている姿を見せるよりは、アニメーションで歌の世界観を補完してもらおうということになりました。「バレリーナ」を聴いてもらったら、「いろいろなイメージが思い浮かぶよ。」って言って下さったイラストレーターの近藤康平さん、映像監督でアニメーション作家のワタナベサオリさんがやりたいと言って下さって実現しました。

すごく、本当に良いものを作って頂きました。ストップモーションアニメーションなんですけど、ものすごい作業量なんですよね。私がきっとこうなんだろうなと思っていたものよりすごく大変な作業で、ものすごい作業量と情熱が詰まってる映像なので、それを見て欲しいなって思います。近藤さんのイラストがとても繊細で、色彩の使い方も含めて美しいので、気に入った方はぜひ、近藤さんの他の作品も見て欲しいと思って。とてもリスペクトしています。

余談ですけど……自分が出ないと決まった瞬間に、「ダイエットしなくていいんだ……!」と気付いて、すごく気が楽になりました(笑)。

 

-()。また、本作は事前に購入予約をされた方限定で、書き下ろし未発表曲『造花』のCDがプレゼントされましたよね。

 

橋爪もも : 基本的には、アルバムの12曲を聴き終えた時に、明確なハッピーエンドというわけではないんですが、温かく終わるようには仕上げています。

ただ……今回の「造花」という曲は、アーティスト写真やアルバムジャケットでは生け花を使っている中で「造花」というタイトルで……若干不穏な空気はあると思うんですけど……その通りで。1曲目の「内包された女の子」や、「バレリーナ」、「リセット」も女性が主人公の曲なんですけど、それらに対して、バッドエンドで終わるアンサーソングとして書いています。なので、この13曲目を手にしていただいた方はアルバムをバッドエンドにもできる、すごく本作に関わってくる1曲ではあります。

発売後も、手には入らないんですけど、オンエアするきっかけがあれば流していきたいなと思っています。特典CDにするのももったいないぐらい、今作に入れたかった力作です。

 

わかりました。それでは、本作を聴くリスナーにとって、どのようなタイミングで本作を聴いてもらいたいとお考えですか?

    Comments are closed, but trackbacks and pingbacks are open.