雪駄(読み方 : 雪駄)
HP : http://sanshin-art.com/
Twitter : https://twitter.com/anisolution
雪駄は都内在住・唯一無二の筆文字・筆絵スタイルを中心に、アナログ・デジタル・日本画的アプローチ・ライブペイント等、数々の形式で創作活動を行うクリエイター兼株式会社 参芯-サンシン-の代表取締役。中でも、自身の落款(らっかん)や墨筆から放たれる漢字は彼の作内で外す事の出来ない要素だ。
2016年には、平野耕太原作のアニメ『ドリフターズ』内の筆字デザインに抜擢された雪駄氏。そこから、『牙狼-GARO- -VANISHING LINE-』や『メルヘン・メドヘン』『ゴールデンカムイ』や『ゾンビランドサガ』『賭ケグルイ』『どろろ』等、近年話題を博した作品において、筆絵を中心に各種デザインを担当。TOPPA!!読者の中でも、彼が「描いた」文字・デザインを見たユーザーも多いのではないだろうか。
今回、類稀なる才能から、ジャンルを超えて数々の偉業を成し遂げてきた雪駄氏に対し、改めてその生い立ちや現在のスタイルに至ったきっかけ、近年の活動のあれこれ等を伺うべく、メールインタビューを行った。話の進みから、期せずして1万字を超えた本インタビュー、必見である!
文 / 雪駄 編集 / 宮久保仁貴
–まずは、TOPPA!! 初登場ですので、雪駄様の自己紹介をお願いします。
雪駄 : はじめまして!雪駄(せった)といいます!宜しくお願い致します!たまに「ゆきだ」さんと言われるのですが「せった」です!
まず、生い立ちということですが、学生時代までは本当に何でもない普通の生活をしていました。もちろん絵もデザインもしていません。変わった事と言えば、15歳の時に家出をしてヒッチハイクで北海道から鹿児島まで行ったこと、17歳からバンドを始めた事でしょうか。一応、立体の専攻で美術短大に行って彫金とかやっていたんですが、授業はほとんど出ないで遊びまくっていましたね。
–現在の経歴から振り返ると、意外ですね……!そこから、現在の筆絵スタイルをどのような経緯で始められたのでしょうか?
雪駄 : 26歳くらいで筆字デザインを始めるキッカケ(後述)となる出来事があり、31歳の時に、TVアニメ「ドリフターズ」で筆字デザインのお話をいただきました。その時はバンドメンバーの会社の塗装屋で働いていたんですが、「あ、俺の人生の切り替えポイントは多分ここだ!」と直感的に感じて、社長に「俺はアートで生きていきます!!!」と熱く語ってすぐに退職しました。今思えばあの時辞めていなかったら、今の生活はしていなかったでしょうね。ただ、辞める時は多くの人にめちゃくちゃ反対されました。辞めてすぐに「株式会社参芯」という会社を立ち上げて、後に退けない状態を作り上げたんです。
–転機となると共に、雪駄様の相当の覚悟を感じます。
雪駄 : その後に絵を描くキッカケとなる出来事(こちらも後述となります)があり、今に至るというわけです。
–ありがとうございます。続きまして、雪駄様の活動として、各種イラストデザインは勿論の事、文字デザインや筆絵等、非常に幅の広い活動が挙げられますね。絵・筆のルーツをお教え下さい。
雪駄 : まず筆字デザインに関して、先ほど言ったキッカケとなったのが、グラフィティアーティストの「SHOBEL」さんとの出会いです。「我武者羅」というバンドをやっていた時に、バンドTシャツのロゴデザインをお願いしたんですが、あまりにもカッコよくて!「こんな風に文字を描けたら気持ち良いだろうなぁ……!」と、それが自分の中で初めてクリエイティブな部分を意識した瞬間でした。
自分自身で始めた頃は、紙に鉛筆で当たりをとって輪郭線を描いてからパソコンに取り込んでトレースする形を取っていました。自分が文字を「書く」ではなく「描く」と表現しているのは、これがルーツだからですね。
–そこから、現在のアナログスタイルに移行される事になるかと思います。
雪駄 : そして、趣味で描いていくうちに物足りなさを覚えていきました。それがアナログならではの「偶然の美しさ」なんです。鉛筆→ペン→パソコンの行程で作業していると入り込む余地がないのが、「滲み」だったり「かすれ」だったりするんです。
ペンでかすれを表現するのはあまりにも自然じゃなさすぎたので、ここで考えたのが「そもそも筆で描けば良いのでは」ということでした。
早速実家に小学生の時に授業で使っていた習字道具を取りに行きます。こうして30歳のおっさんが、めでたく筆字デザインの道を踏み出したわけです。
今では、文字に込められた「意味」や「成り立ち」などを考え、自分なりに形として表現したいと四苦八苦しています。
–確かに。こう考えてみると、デジタルならでは、アナログならではの利点がありますね。続きましては、絵のルーツをお教えいただけますでしょうか?
雪駄 : 次に絵に関してですが、私の場合すごく特殊で、絵を描き始めたのが、独立して会社を立ち上げた後なんですよ。
–これもまた、意外な話ですね!
雪駄 : 独立してすぐの頃、知り合いの絵描きの「ZUKK-ずっく-」くんの個展が、自宅のそばで開催されるということで遊びに行きました。そこではZUKKくんが大きい布に、アクリル絵の具がついた筆とヒートガンを持ってライブペイントをしており、その横では以前TOPPA‼さんでも特集していた「GENk-げんき-」(現:SRBGENk)くんのブースがあり、彼は”可愛い”女の子の似顔絵を描いていました。
関連 : SRBGENk インタビュー
https://toppamedia.com/interview-srbgenk/
ライブペインティングに沸き立つオーディエンスと、泣きそうになりながら感動している女子。
その光景を見た時に、かっこいいとか絵が素敵とかそういった物はひとまず置いておいて、真っ先に出てきた気持ちが「羨ましい!」だったんです。その時に、初対面だったGENkくんに何故か「俺、今日から絵始めます!」と宣言をして、ZUKKくんには、彼が毎回出演している「アニメイズ」というアニソンイベントで、自分も描かせてくれないかとお願いしました。
そして、初めての作品がライブペインティングというよくわからないキャリアの第一歩を踏み出したのです。
ZUKK ARTWORK
https://www.zukkartwork.com
SRBGENk SWEETRUBBERBERRY
http://sweetrubberberry.sakura.ne.jp/
–ただ、その衝動・熱量こそ、正に芸術家に欠かせない要素のように思います。合わせて、普段雪駄様がアナログ・デジタルで普段活用されているツールを教えて下さい。
雪駄:アナログの手法では、使えそうな物はなんでも使います。
ただ挙げるなら、木パネル・和紙・わら半紙・筆・墨・アクリル絵の具がメインですね。あと、pebeoから出ている「Vitrail」というガラス用の絵の具をかなり愛用しています。
そして、自分の作品の特徴とも言えますが、自作の落款(らっかん)と印泥(いんでい)です。
–落款や印泥は、雪駄様ならではの要素ですよね!
雪駄 : そして、デジタルでは圧倒的にipad proのProcreateが多いです。で、仕上げはPhotoshop。Illustratorはロゴなどの仕事で使いますね。
–わかりました。続いては、雪駄様が創作を行う上で、インスピレーションの湧くタイミング、こだわりを教えて下さい。
雪駄:インスピレーションの元は至る所にあって、例を挙げたらキリがないですが、強いて言うなら絵描き仲間と酒を飲んでいる時でしょうか。
『SRBGENk』くんはもちろん、こちらも以前特集されていた『shichigoro-shingo』さんや『キョウグ』くんなど、みんな素晴らしい作家さん達で、飲んで話す事といったら創作のことがほとんどですから、いろんな意見が膨らんでインスピレーションが湧く事はよくあります。
関連 : shichigoro-shingo インタビュー
https://toppamedia.com/interview-shichigoro-shingo/
こだわりは……古さを表現する事です。
ここでいう古さは作風の事ではなくて、経年劣化などの汚れ感の事を言います。何故だか昔から、現存している浮世絵や絵巻物・ボロボロになった古文書などを見ると「かっけぇぇぇ」と思う性癖があるので、なるべく自然に古さを表現できたらと思っています。こだわりとはズレますが、カッコよくデザインした紙物を、雑に丸めて梱包材にするのとか超かっこいいと思います!思いますよね!
–なるほど!また、クリエイターとして活動する上で、意識している事を教えて下さい。
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