もの久保 ( 蟻塚 ) インタビュー

もの久保 ( 蟻塚 ) インタビュー

 

もの久保 : ありがとうございます。

昨年7月ごろメールで出版のお誘いをいただき、そのままどんどん進んでいった形です。pixivやニコニコ静画でご覧いただいていたと担当者様から伺いました。

最初に描いたイラストが2015年の投稿ですので、もう五年になる計算です。

当初は大学の文化祭で本にする予定だったのですが、大学生だったのがもう三年も前のことになってしまいました。

 

-濃厚なファンタジー世界が絵によって紡がれる本作ですが、シナリオ構成はどのように進められたのでしょうか。一つの大きな本筋を用意されたのか、あるいは描き進める事に世界が広がっていったのでしょうか。

 

もの久保 : ありがとうございます。

始めは特に大きな話にする予定はなく、四、五枚描いて後を匂わせる形で終わらせるつもりでした。

それが、思ったよりもご好評をいただけたため、なら四十枚で終わる話にしてみようということになりました。

今はもう二百枚を超えています。先が見えません。

プロットは早い段階で決めましたが細部が詰まっていないため、際限なく長くなります。

これまでもこれからも自己満足の世界です。ついてこられる人間がいなくなっても続きます。

 

-刊行されたばかりですが、続きが楽しみになってしまいます。『Replicare {レプリカーレ}』を読み進める途中、ダークファンタジー的な世界観を感じさせました。もの久保様自身の宗教観に関して教えてください。どのようなものを信条としていらっしゃいますか?

 

もの久保 : 私の実家は一応曹洞宗ですが、多くの日本人と同じく、ただそうであるというだけです。思い出すのは葬式のときぐらいです。自分自身も特に宗教らしいものを持っていません。信条というべきものも特になく、儒教ベースの道徳観だけはとりあえずあります。ダークファンタジーの定義はよくわからないのですが、世界観はおそらく、小中学生の頃よく読んでいた海外のファンタジー系児童書に根を持つところが多いかと思います。『バーティミアス』や『デルトラ・クエスト』、『リンの谷のローワン』シリーズなどかと思います。

 

宗教といえば、小さい頃に自分だけの神様を持っていました。家の裏の焼却炉の付近が祭壇で、よくできた泥団子などをお供えしていました。願い事をすることはあまりありませんでしたが、不思議な安心がありました。しかし、他の人間を信者に加えた後、信仰上の相違が生まれ、最後には「そんなものいないよ」と上の兄弟から言われる形で瓦解しました。

『Replicare』の神様は、「宗教」と体系化されているものよりも、そういう曖昧なものに近いと思います。

ただ、私の神様は「いない」と言われて数日でいなくなりましたが、本作では怪物になります。

今もたまに後ろめたくなります。私の神様が怪物になっていなければいいのですが。

 

-また、「美」と「恐怖」の要素がフィーチャーされています。もの久保様自身、「美」そして「恐怖」を感じる物事やタイミングを教えてください。

 

もの久保 : イラストレーターらしく、なにかもっともらしいことを言いたいのですが特に変わったところはありません。

花や雄大な景色を見ればきれいだと思いますし、夜道ではイノシシに会わないかいつも心配です。ホラー映画は映画館では観られません。

ただ、美しいと思うものの中でも特に人間の皮膚の質感や、サルスベリのような滑らかな木肌の風合いが好きです。

恐怖については、最近はモチーフとして「違和感」を題材に描くのが好きです。この画集ではもっと直截な表現が多いのでそぐわない答えかもしれません。

幽霊については青白く半透明な「よくある」ものとして描いていますし、怪物の描画については、自分にとって魅力的な表現やモチーフを詰め込んだものとして仕上げたので、恐怖を念頭に置いているとは言えません。

 

 

-なるほど。話は変わりますが、もの久保様自身の過去のツイートで、本作の登場人物の紹介を行われていらっしゃいます。特に一番お気に入りのキャラクターは誰ですか?

 

もの久保 : 一番最初にいたのが鎧の男(騎士さん)と神様だったので彼らが一番ではないかと思います。どのキャラクターにも平等に思い入れがあるつもりではいます。

ご感想を拝見するに勇者ちゃんが一番人気のようですね。

 

-数々の絵を描き溜め、完成された本作ですが、制作期間中に感じた心境の変化、また「続き物」としてのコンセプトの途中での変化はありますか?

 

もの久保 :本作は現行分を三分の一程度に無理やり切ってまとめたものでしかないので完成というわけではありませんが、ひとまず形にすることができて安心しています。

制作中、不出来に感じた絵を修正したり一から描き直したりしましたが、「本当にこれは良くなったのだろうか」と思うことしきりでした。本当にここ四、五年で自分の技術は向上したのかどうかずっと考えていたら気が滅入ってしまったので途中から無を心がけました。正直、今作の制作作業はどれを取っても過去の自分を思ってかなり精神に堪えるものでした。

「続き物」のコンセプトは当初からあってないようなあやふやなものですので、短い期間であれこれ変わっています。これからも変わるかと思います。

最終的に、自分が描きたいものが詰め込めたらそれでいいと思っています。

 

-改めて、もの久保様自身にとって『Replicare {レプリカーレ}』は一体どのような一冊だと思われますか?

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