明日の叙景 インタビュー

明日の叙景 インタビュー

明日の叙景(読み方 : あすのじょけい)
メンバー(LtoR) : 布(Vo) / 等力(Gt) / 齊藤(Dr) / 関(Ba)
HP : http://asunojokei.info/
Twitter : https://twitter.com/asunojokei
Facebook : https://www.facebook.com/asunojokei
Bandcamp : https://asunojokei.bandcamp.com/

ポストブラックというと、TOPPA!!をよく読んでくれている方々にはあまり馴染みのない音楽かもしれない。解釈は様々だが、トレモロリフを多用したブラックメタルの要素を持ちつつポストロックなどの浮遊感を共存させたサウンドで、一種暖かみを感じさせるようなメロディを奏でるバンドが多いように思われる。明日の叙景はそんなポストブラックをベースとしながら、実験的な要素を盛り込み美しく昇華させているバンドだ。

そんな彼らは今年の2月に1st Album『わたしと私だったもの』をリリースした。
一筋縄でいかない彼らのサウンドだが、時にキャッチーな瞬間や、琴線に触れるメロディを多く含んでいる。

今回TOPPA編集部では、1st Albumのことはもちろん、意外と思われるような彼らの音楽的ルーツや他者に流されることのない強固なスタイルにも迫った。
是非、興味を持った方は彼らの音楽に触れてみて欲しい。

取材・文・編集 / 鹿野貴大


 

-TOPPA初登場ですので、先ずは結成の経緯から教えてください。

 

齊藤 : 中学3年生の時に、ベースをやっていた友人からバンドに誘われました。その時、友人が連れてきたギタリストが等力でした。ですが、その話は有耶無耶になってしまい、僕と等力で何かバンドをやろうとなり、元々一緒にスタジオに入ったりしていた現在のベーシストの関を誘ったのが、きっかけでしたね。最初はインストバンドでした。

等力 : それが大体高校生ぐらいの時だったのですが、その時は適当にジャムしたり、曲を作ったりであまりライブや外への発信はしていませんでした。そのままバンドがなくなりかけていたような状態だった時に一度企画をやろうと思いまして、高円寺のドムスタで自主企画をやりました。それが現在の明日の叙景の母体となっていますね。

その後、大学受験などがあって期間が空いた後、もう一度スタジオに入ってジャムをしながら何度かライブをやってみたりしたのですが、やっぱりボーカルがいないとバンドとしての顔がなくて寂しいなと思いました。その当時、僕が聞いていたisolateがブラックメタルの要素を取り入れ始めていたのですが、すごく面白いなと思いまして。

 

 

そのようなスタイルでバンドをしたくなり、ボーカルを探し始めました。ヴォーカルの布のTwitterアカウントから、彼が大学のサークルでやっていたCONVERGEのコピーバンドの動画を見て、この人とやりたいと思いDMで誘って加入してもらった感じです。

 

-布さんは初めてのオリジナルのバンドをやることについて抵抗などは無かったんですか?

 

布:憧れみたいなものはありましたね。僕なんかがやっていいのかな?みたいな思いはありましたけど。等力から来たDMに対しても「バンドに対する理解力はありませんが、それでもいいならやらせていただきます。」というような感じで返しました。

 

-なるほど、ありがとうございます。
次にメンバーさんそれぞれの音楽のルーツに関してお聞きしたいと思います。

 

布:小学生の頃からポルノグラフィティとB’zが好きで、その2つばかり聴いていたんですが、中学生の時に友達にMY CHEMICAL ROMANCEを教えてもらってハマったんです。Gerard Way(Vo)がインタビューでIRON MAIDENとBLACK FLAGというバンドに影響を受けていることを知り、じゃあその2つを聞いてみようと思い聴きました。BLACK FLAGは全然良さがわからなくてすぐに聴くのをやめて(笑)。でも、IRON MAIDENの方はとても気に入りまして、これってどういうジャンルなんだろう?と調べて見たらヘヴィメタルという音楽だ、ということでWikipediaでメタルについて調べていたら、メロディックデスメタルなるジャンルが目につきました。そこからARCH ENEMYやIN FLAMESなどを聞いてメタルにのめり込んでいった中学、高校時代でしたね。

 

その後、大学に入った時に所属していたメタルサークルで激情ハードコアとブラックメタルと出会ったことが大きいと思います。なかでもサークルの人がコピーしていたheaven in her armsは何度もライブに通い詰めたり、新宿のディスクユニオンの激情ハードコアの棚の中古CDを買い占めて聴いたりしていました。その時に出会ったのがRAEINやDAITROや今度来日するCITY OF CATERPILLARなんかですね。

 

 

自分のボーカルスタイルとしてはRAEINやDAITROなんかが使っている泣き叫ぶような線の細い激情ハードコアの歌い方やLIFELOVERなどのデプレッシブブラックメタルの引き攣るような、悲壮感漂う歌い方、そして最後にDIR EN GREYやムックみたいなV系のナルシシズムな感じは意識していますね。

 

-その2バンドも入ってくるんですね…!

 

布 : そうですね、自己否定と自己肯定を繰り返す感じというか…「自分大好きなのに、自分が大嫌い」みたいなそういうところからはかなり影響受けていますね(笑)。

 

齊藤 : 僕は4〜5歳くらいから親の影響でKISSを聞いていてドラムを始めたんです。小学2年生ぐらいの時に通っていた児童館の職員の人もロック好きで、その児童館内でバンドをやる機会があったんです。その時にコピーしたのがLUNA SEAで、そこからLUNA SEAを聴いていたんですけど、僕が小学3年生くらいの頃に児童館内でDIR EN GREYが流行りまして、そのままハマりましたね。ちょうど「VULGAR」というアルバムが出た頃だったかと思います。

その後、中学生頃ぐらいから9mm parabellum bulletやマキシマムザホルモン、もう少し後になるとTOOLやDEFTONESなんかを聞いていましたね。ドラムのプレイスタイルはドラムを始めた頃に島村楽器にレッスンに通っていたんですけど、そこで教えを受けたジャズドラマーの先生からの影響が強いですね。

 

等力 : もともと小さい頃からJ-POPが好きで、小さい頃はドイツに住んでいたんですけど、まだネットとかもなくて親戚がその当時の日本で流行ってる音楽をCDに焼いてくれて、それを送ってきてくれていたんです。それでドイツって基本移動手段は車が多いんですけど、その車の中で流れている音楽を聴いていたのが私の音楽の原初体験ですね。なので今でもJ-POPっぽいコード進行とかを聴くと、ドイツの街並みを思い浮かべます。

演奏する側のルーツとしては日本に帰ってきて、小学校の4年生の時に何か楽器をやりたいなと思って習い始めたのがクラシックギターでした。ルーツとしてはそんな感じですかね。なので演奏スタイルとしてはかなりクラシックギターの影響が強いですね。普通のロックのミュージシャンってギャーン!って弾いてミュートして雑に音を止めるっていうのが普通だと思うのですが、ストロークして音が止まるまでが音楽だっていう意識があったりしますね。

 

-そこからハードコアパンクなどを聴くようになったのにはどんなきっかけがあったんですか?

 

等力 : クラシックギターをやっていると、コンクールに出る、という話になってくるんですけれど、人が作った曲を演奏することや、コンクールに出ることに疑問を抱くようになってしまったんです。それと同時に、家のテレビで音楽系のケーブルテレビでやっている番組でBEAT CRUSADERSや活動休止前のELLEGARDENを見て、かっこいいな、こういうことやりたいなと思いました。

でもクラシックギターをやっていると、こういうロックバンドとかってダメなのかな?やっちゃいけない音楽なのかな?っていう風に思うんですよね。僕の中での超えちゃいけない一線みたいなところが、ロックバンドに対してはあったんです。でも中学生になって、そういうものに自分が強く惹かれてる内に躊躇ってる場合じゃないなと思って、そういう音楽をやるようになりました。自分の中で引いていた一線を超えてからは色々と早かったですね。都内に住んでいるので、ライブハウスやクラブなどにはもう行き放題というか、自分が気になる音楽はドンドンDigって、イベント単位で気になるものはジャンル関係なしに全て行きました。

そこからは先は全てが同時進行というか、高校生くらいの時には同人音楽というか、マイナーなハードコアテクノのイベントに行ったり、新大久保アースダムにENDONを見に行ったりしていましたね。まだステージから機材投げたりしている時期でした(笑)。

 

-分かりました、ありがとうございます。直近で1st album「わたしと私だったもの」をリリースしたと思うんですが、前作「過誤の鳥」と比べて従来のポストブラック、激情ハードコアとはまた違ったアプローチを感じます。これを制作するにあたって何か意識したものなどはありますか?

 

 

等力 : メンバー間でバンドのことについてコミュニケーションを取るときに、「今までこういうことをやっていたから次はこうしよう」みたいなやり取りをすることはありますね。前作の「過誤の鳥」はアトモスフェリックでメランコリックなイメージが強くて、コンピレーションのために一曲作った「花装束」はパンチがあって、カオティックな感じで…っていう風に作ってきて、じゃあ今作はまた違う感じにしようという中で作っているので意識している、というか自然とこういう作品になったという趣が強いですね。

 

 

布:なんとなく、今ある中でこういう要素の曲ないよね?みたいな。例えば強めのストレートなやつ欲しいよね、とか変わり種作ろうか、みたいな感じで作ってるイメージですね。なので最初から想定している物があってそれを狙って作っているという風な感じではないです。

 

-聴いてみた感想としては7曲中3曲が7分超えや10分超えの大作となっていますが作曲者はみんな同じですか?

 

布:1曲目「たえて桜のなかりせば」が等力で、5曲目「月の恥じらい」と7曲目「薄氷」は僕が原案ですね。僕が作ったものに関しては適当にフレーズを考えて持って行ったら、体感していたものより長くなってしまったというような感じです。

 

等力:アルバムの中で最初に出来たのが一曲目の「たえて桜のなかりせば」だったんですけど、これは良くも悪くも今までの明日の叙景っぽいね、とかイントロっぽいよねって話になって、この曲をベースにアルバムを作っていこうっていう風になりました。2曲分くらいのエッセンスを入れて作った「月の恥じらい」や、今までにない歌モノみたいな「醜女化粧」をドラムの齋藤が作ってきたりして。

 

 

「醜女化粧」は初めて聞いた時、とても衝撃を受けました。布さんがメロディを歌ったり、ラップとも言えるようなポエトリーリーディングを使ったり、今までにない感じですよね。

 

等力:最初はコード進行と変なリズムで作りたいってだけだったんですけど布が意外な歌い回しを入れてきたので、予想外に歌モノになりましたね。

 

布:かなり苦戦しましたけどね(笑)、あれはラップ的な影響もなくはないんですけど一番意識したのはDIR EN GREYの「embryo」という曲ですね。あの曲の呟くように歌う感じは強く影響受けてます。

 

等力:あとはコンパクトでパンチの強い曲を2曲目に入れたいと考えて作ったのが「火車」です。この曲は持ってきたデモの段階からかなり詰めましたね。テクニカルなフレーズの所とかは2〜3回作り直しました。纏めるとやっぱり最初からコンセプトがあって、というよりは作りながらメンバー間でコミュニケーションをとって出来たものを切り取って出しているという意識が強いですね。

 

布:最終的な取りまとめ役はやっぱりDrの齊藤とGtの等力ですけどね。皆で色々言ったものというかバラバラなピースを1つに繋ぐことのできるのはこの2人の魅力ですね。

 

等力:楽曲の理論っぽい面は僕らですけれど、ポストブラック的に、とかハードコア的な面での……といった聴く側としての意見は布に言ってもらうことが多いですね。

 

-お互いにバランスが取れている感じなんですね。今回の歌詞についてなんですが前作の「過誤の鳥」の時に感じたようなダークで絶望感の強いものから変わって、ポジティブにも取りやすいような印象を受けたんですがその辺りは心境の変化はありましたか?

 

布:確かにポジティブな言葉を前作より入れた感じはあるんですが、それよりも今作は届きそうで届かない感じですとか、幸せな状態から転落していく、というような物についても書いていて、そう言ったところで振れ幅はあるのかなと思います。あとは作品全体を通して「変化」というか、人としてどう変わるかについて書きました。でもその変化っていうのは誰からみてもプラスに捉えることのできるような進化や成長いうものではなくて、人によってはマイナスにもプラスにも見られるようなもので…良くも悪くも古い自分から新しい自分へと変わったということを書いています。そこから先のその人がどうなっていくかとかは関係なしにですね。昔は…そうですね。「自分の辛さや悲しみを分かってくれ」という趣が強かったかなと思います。

 

-今回は4曲目の「鉤括弧」で齊藤さんも作詞されていますね。

 

齊藤:そうですね、曲も原案から僕が持ってきていたのでメンバーからやってみたら?と持ちかけられて書いてみました。もともと昔やっていたバンドでも作詞していましたし。内容に関しては、鉤括弧って口頭で台詞を言う時に使う物だと思うんですけど、歌詞はその外側の自分が思っていることだったり、内面の感情について書いています。

 

布:隠れた本音的なところだよね(笑)。
齊藤:歌詞が書けて布に見せた時に、ここはこう言う解釈で合ってる?とかそう言う風なやり取りをやったんですけど、それが一種カウンセリングみたいで(笑)、印象的でしたね。

 

布:僕の歌詞を人が読んだ時にどう言った解釈を抱くかは好きにしてくれていいんですけど、自分が歌う歌詞、となった時に書いた人の解釈と違う解釈を持って歌いたくなかったのでそう言ったプロセスがありましたね。

 

-なるほど、よく分かる話でした。

 

布:僕の理想はL’Arc-en-Cielなんですよね。

 

-といいますと?

 

布:語弊があるかもしれませんが、メンバー全員が作曲作詞どちらもできるような状態ですかね。

 

等力:僕も歌詞書かないといけないのか……(笑)。

 

布:楽しみにしています(笑)。

 

-なるほど、それも面白いかもしれませんね。今作『わたしと私だったもの』はYouTubeでフルで公開されていて、かなりの再生数(※2018年4月公開時現在で約3万回)を記録していて、更に世界的なブラックメタルレーベルであるPest productionsとも今作の国際盤の契約を交わされていらっしゃいますね。現在の日本のシーンはアメリカやヨーロッパの最先端を追うことに終始しているバンドが多いように見受けられますが、そういったバンドよりも明日の叙景は海外から注目されていると思います。
そういった部分に対して思うところはありますか?

 

等力:明日の叙景は基本好き勝手に作っていて、どこの層にアピールするかとかはあんまり考えてないんですけど、再生数なんかの話は布のアイデアでYoutubeにアルバムを上げていて、それはまぁ対象を日本人だけに狭める必要はないなと思ってアップロードしてるだけですね。

 

布:うん、少しでも多くの人に聞いてもらえたらいいなと思っているだけですね。

 

等力:でもなんというか、自然と「クオリティ」の戦いには参加しないようにしていますね。言ってしまえば、「クオリティ」の戦いに参加しようとすると、どれだけ話題性があるかとか、如何にお金があるかとか、どれだけ見た目のいいメンバー入れるかとかどれだけ楽器のうまい奴を入れるかとかそういった話になるので。ハナからそういう土俵に立たない、逆に土俵を作る側に回ろうみたいな考えはありますね。かっこよく言えば(笑)。枠組みを作る方に回りたいと思っています。そうじゃなきゃ僕らは勝てない、と考えていますね。とはいえ、明日の叙景を真似するような人たちはいないんですが(笑)。

 

-最後にこれを読んでいる人にメッセージをお願いします。

 

齊藤:このインタビューを読んでくれた人で馴染みのない人も、聞いたこともある人も改めてアルバムを聴いて欲しいと思います。YouTubeにも上がってます。

 

-本日はありがとうございました!

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