Vision of Fatima
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メンバー : (星拳五(Vo) タシロショウキ(Gt) 藤井馨(Gt) 加藤タカスケ(Ba) Mitch Katoh(Dr)
ライブバンドの条件とは何だろうか? 1つここで挙げるとするならばそれが「塊」であるか否かである。性格、出身、嗜好など全く異なったパーソナリティーを持った人間が渾然一体となって1つの集合体となったかのように音楽を鳴らす。そこには強靭なグルーブが生まれる。
2010年結成、京都のカオティックハードコア、Vison of Fatimaは正にその文脈の下に音を鳴らしているバンドだ。これまでに二枚のEP、そして本稿でも触れている越谷ハードコアAzamiとのスプリットをリリースしている。
今回TOPPA編集部は彼らの音楽的ルーツは勿論、その凄まじいライブにまつわる精神性など、DEEPな部分に迫った。
文章 / Vision of Fatima 編集 / 鹿野 貴大 photo by Takuya Oyama (THINGS.)
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–先ず初めに、Vision of Fatimaの現在に到るまでの経歴を教えて下さい。
タカスケ : 2010年に結成しまして、初ライブ前に馨くん(Gt)が加入したのでオリジナルメンバーは僕と馨くんの二人です。その後数回のメンバージェンジを経て、前任ギターのAfterが加入し、そのメンバーで固定して約四年間続けました。Afterが脱退して、今年6月よりタシロ(Gt)が加入し現体制に至ります。
–かなり独特なサウンドの特徴を持っていると思いますが、バンドとしての音楽的ルーツ、各メンバーの音楽ルーツ、サウンド、曲についてこだわっている部分、またフェイバリットバンドについて教えて下さい。
タカスケ : バンドのイメージはスペインのシュルレアリスム作家、サルバドール・ダリから。楽曲的な話をするとDeathwish Records、Solid State Recordsのバンドに主に影響を受けています。
(Deathwish Records : ConvergeのJacobが主催するレーベル、Solid State Records : Underoath,Norma Jeanなどが所属したレーベル)
個人的な音楽のルーツは、The ChariotのBa.John KC Wolfからベーシストとして、というよりテンション感において大きな影響を受けました。
Mitch : CONVERGEのDr.のBenが好きです。
タシロ : 音楽的にはThriceの(Vo/Gt)のDustinから影響は受けてますが、ライブパフォーマンスに関しては、あえて何もルーツとしていないです。
馨 : UnderoathのGt.のTimにギタリストとしてのスタイルを学びました。曲についてこだわっている部分に関しては、自分の感情、拳五の言葉をコンセプトにして、それを直感的に音に落とし込むようにしています。その感情をメンバー5人が共有し、塊としてライブで表現することに注力しています。
拳五 :Mindless Self IndulgenceのJimmyからはボーカルとして大きな衝撃を受け、今も影響下にあると言えます。
ライブ表現に関して具体的な説明をすると、ライブ時の意識としてはまず各々が肉/身体の主張を強く念頭に置くことをしています。そしてバンド自体、五人の総体として一つの肉体があるという共通意識として持つようにしています。
しかし、各個が同位体であるというのではなく、その肉体の中で違う部位を担っていて、少し不恰好で奇形的な身体が出来上がっているイメージを想像頂けると幸いです。
曲順、曲間などの予定されている骨組みがあったとしても、毎回肉付きの違う身体をお見せできるようにしたいので。ライブ中、過剰に動き回る動機もこれらの肉の意識に起因しています。
またその過剰な運動によって現れる疲労も、ライブにとっては重要な要素なのではないかと僕個人は感じています。
というのも、冒頭でバンドイメージの根幹には、ダリという画家がいるという話をタカスケがしましたが、それに準ずるシュルレアリスム的表現を、僕はこのバンドでなら、絵画とは違う表現方法で、体現できるなと考えています。
疲弊は思考力を奪います。その状態で、断続的にショーを続けることで、頭のどこかで予定していたりした動きとは違う、自分の想定の枠を超えた身体表現などが引き出されます。
その中には自身の意識外の、無意識内の行動が含まれているはずで、それは超現実的なパフォーマンスと言えます。僕自身ライブ後に、なんやあの動き…。とおもしろくなることがよくありますし(笑)。
詩に関してはあまり社会的なメッセージなどはなく、僕個人のパーソナルな過去の問題や、生活に伴う感情や発見などを主題に作成しています。
しかし、そのような個人的な命題にも関わらず、メンバーはそれらを各々の視点から理解しようとしてくれており、その点は本当に有り難いなと感じていますね。僕も一般的な人間ですので、僕個人に限定した詩の中でも、必ず共感を生むことができるとも思っています。
また最近ではオートマティスムを採用した別の作詞手法も採ったりしていますね。
–活動のキャリアの中でエピックな出来事について教えて下さい。
タカスケ : Capsize(US)とのツアーはかなり貴重な体験でしたね。
Capsizeが2015年に初来日した時に対バンして、ルーツを通じて彼らと意気投合して、「次来日した時は必ず一緒にツアーを回ろう」という話をしました。その時彼らがAzamiの事もすごく評価していたんです。その時、僕らはまだAzamiのライブを見たことはなかったんですが、親近感は感じていました。こいつら(Capsize)が良いっていうなら間違い無いなと。嫌いなものに対してはボロクソに言うので(笑)。
そのあと、自分たちのリリースツアー(”rooms TOUR” 2015.7.20 @ GARRET udagawa )最終日にAzamiと対バンして、すぐに仲良くなりました。
自分達が強くシンパシーを感じた国内外のバンドとツアーを周り、人間的にも音楽的にも影響し合えたCapsizeとのツアーとrooms TOURはバンドの大きな経験値になっています。結果として、2016年に、Azamiと『Wolf / Wave』というスプリット作品をリリースしましたし、そのリリースツアーでCapsizeをゲストバンドとして僕達で招聘しました。
特に、Azamiとは今後も本当に仲良くしていきたいですね。どんどん売れていくけど(笑)。
拳五 : あとは2014年にEP『In Your Blot:__』のリリースツアーファイナルでPalmとbilo’uとのスリーマンライブを実現できたことですね。ツアーファイナルという一つの節目の企画で、圧倒的なライブクオリティを持つバンドと高密度な場で共演できたことは、まだまだ何も終わってないな、むしろこれからだ、と思えることができましたね。それと共に、大きな刺激と活力を得ることもできました。bilo’uの皆さんとはこれが一つのきっかけで知り合えて親しくなれたことも嬉しかったです。
–昨今のラウド・パンクシーンで勢いのあるバンド、個人的に注目しているバンド、現行のシーンの流行について思う所を教えて下さい。
拳五 : そもそも、キッズやシーンという言葉にはあまり好感を持てていないですね。名称で区切ることによって、内外部で良くない自意識が芽生えると思うんですよね。それはカルチャーの部分的な繁栄には必要なのかもしれませんが、むやみな敵対意識を生む原因にもなりますし。
「じゃあお前らも”カオティック・ハードコア”と名乗っているじゃないか。」と言われるかもしれませんが、そもそもそれは和製的なくくりで、その分ファジーです。なので自分たちの好きなようにサウンドをコントロールできます。もちろんある程度の音楽性の指標として名乗っていることも事実ですが、それだけではなくバンドのスタンスの指標としても提示することができる言葉であったり、ライブパフォーマンスの事であったり、マーチなどのヴィジュアルアプローチにまでおよぶコンセプトとして、カオティック・ハードコアという言葉を使っています。
タカスケ : 注目しているバンドは沢山います。でも、特に地域性や流行などを気にしたことはないです。
関西のバンドも減ってきてる印象はありますけど、だから東京が良いとかは思わないと言うか。まあ、東京は絶対数が多いので良いなって思う部分はあるかもしれないですけど。そんな遠いこともないからすぐ行けるし、別に地域で分けて考える必要はないなと。なので、この質問に関しては、その時自分たちが良いバンドと思うバンドが良いというだけで。だいたいそういった思いはその場で伝えてるつもりです(笑)。
ただ、メンバーが良いと思う音楽はいつも五人共通して良いと感じていて、それは近しいジャンルだけではなく、全く別のジャンルの音楽に関してもそうです。それぞれが良しとして聴かせてくれたものは、メンバー皆基本的良しとしてます。
ちなみにVision of Fatimaの「京都発」と言う肩書きにも、特にこだわりは無いです。
–今後の活動について、音源リリースや企画など展望がありましたら教えて下さい。
タカスケ : フルアルバムリリースに向け現在楽曲を制作しています。また、リリースは少し先になるので、それまでの間に企画も予定しています。
2017年はメンバーチェンジがあり態勢を立て直す期間でもありましたが、バンドの状態が改めて整った上で、今までではあり得なかったぐらいの長い時間をかけてディスカッションを重ねました。早く音源を作りたいという思いの反面、皆の考えをはっきり統一させて最高の形で楽曲制作に臨みたかったんです。来年はバンドが新しい局面を迎えられる年になると思います。
馨 : 楽曲制作では、メンバーの考えを話し合ってイメージが統一出来てきたので、それを形にする作業をしています。その中でも、バンドが求める新しい要素を組み込めるよう、前回までの音源とは違ったアプローチでの作曲を試行錯誤しています。
–これからシーンを担うキッズ、バンドマンへのメッセージをどうぞ。
タカスケ : あえて言えば、自分たちの周りの音楽は楽しみ方、聴き方にルールや固定概念があるように感じています。月並みな言い方ですが、「その場で思ったままもっと自由に楽しんで欲しい。」と感じています。
ライブも楽曲制作も我々自身がやりたいことをやりたいようにやっています。「「皆と一緒」とか「普通」が飽きたからこんな音楽聴いてるんでしょ?」と、僕達自身思うんで、最低限のマナーはあれど、こんなコアな音楽だからこそ自由に発展して、それぞれの好きなように楽しむべきなんじゃないかなと思います。
タシロ : 多分皆同じ意見ですね。ただ自由に音楽を愛する事が一番本質的だと思います。まあ要するに、変なしがらみとかは本当にどうでもいいので、フラットにいてほしいなって思います、そのスタンスはどんどんいいものを創造するし。
拳五 : 自分の中の美意識や表現様式を拡張していって欲しいなと思います。僕たちは僕たちのカオスを祝福し続け、まだ様々な領域へと向かいたいと思っています。その過程で拡張し合うもの同士、また貫き合うもの同士出会い、何か一緒に意味のある場やモノを作り出すことができることがあれば嬉しいです。
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