DiverCore vol.6

DiverCore vol.6

ヘヴィーミュージックに特化したプレイリスト『DiverCore』(読み方 : ダイバーコア)の第6弾をSpotifyとApple Musicにて公開した。

このプレイリストは国内外問わず“今聴くべきヘヴィーミュージック”をプレイリストというフォーマットを使ってキュレーションするもので、今月は厳選された約50曲をセレクト。

文・編集 / ynott(https://twitter.com/ynott1986)


シーンの壁を超えて急激な多様化を見せる日本のヘヴィーミュージックシーン

自主レーベルを立ち上げ、新しい体制でスタートを切ったSCANDALの新曲がかなりラウドだ。これまでのガールズバンドのイメージを一気に置き去りにするようなビビットかつハードなビジュアル、サウンド面でもインダストリアルな質感のサウンドにオートチューンを取り入れたボーカルアプローチ等、オントレンドな要素を呑み込みつつオリジナリティを確立し生まれ変わったSCANDAL。彼女達の今のモードは確かにThe 1975やBillie Eilish等世界の第一線で活躍するポップアクトらのアティチュードにも共振している。

京都の4人組バンド・UNMASK aLIVEはまさにネクスト・フォーリミと言っても過言ではないポップセンスを持ったニューカマー。新譜からのリード曲「Focus」はUSポップパンクの陽性なフィールと日本のメロコア文脈、さらにはJ-POPの良い要素をマッシュアップしたような底抜けに明るいキラーチューンだ。アイドルユニット・Malcolm Mask McLarenの新曲「Darlin’」は彼女達がこれまでも提示してきたキラキラなフィールのイージーコアチューンになっていて、今やブームが過ぎ去り世界的にも鳴らしているバンドも減りつつあるイージーコアというサウンドを根強く鳴らしてくれている事が個人的に嬉しく思う。

独自の進化を続けるUVERworldの新曲「Making It Drive」は、これまでの彼等のミクスチャー路線を引き継ぎながらもTrapやEDM等のオントレンドな要素を呑み込み、全くの新しいミクスチャーロックを提示している。EDMやPOPSとバンドサウンドで解釈するレイヤーの高さはThe 1975に比肩しているように思えるし、2019年にバンドが鳴らすべきサウンドを見事に体現していると言える。


そして若手のヘヴィーアクト達の活躍も目覚ましい。東京のメタルコア/ポストハードコア・From the Abyssは最新作「Nature」のリード曲「Unconditional」のMVがあのDreamboundのチャンネルで取り上げられ、一躍メタルコアシーンのど真ん中に躍り出た。そして超新星の如くシーンの現れた東京の4人組・One Eye Closedは北海道のCVLTEと同じく次世代のシーンを確実に担うであろうニューカマーだ。

また他にもMy Chemical Romanceやthe envy、Fear and Lothing in Las Vgeas、G-GATE等がそれぞれ新体制や再結成などで再始動など始める等、コアリスナーにとっても嬉しいニュースも続いている昨今のヘヴィーミュージックシーン、2020年は更なる面白い事が起こりそうだ。


クラブシーン発の新しいヘヴィネス

先日行われたZepp DiverCityでのMura Masaの来日公演の際、オープニングアクトで出演していたTohjiのパフォーマンスを初めて観たのだが、これまで自分が何となく持っていたラッパーのLIVEとのギャップに脳天をブチ抜かれた。インダストリアルかつヘヴィーなトラックに乗り、まるで叫ぶようなしゃがれたフロウで歌いステージを縦横無尽に走り回るTohji。オーディエンスは踊り、暴れ、そしてシンガロングする。余りにもラウドなパフォーマンスに驚きを隠せなかったの同時に、そこにはかつて日本のヘヴィーミュージックシーンが持っていた熱量が確かにあった。海外ではエモラッパーを起点にヘヴィーミュージックの更新が日々行われているが、それが此処日本でも起こっている事に驚きと同時に一筋の光を見た気がした。

そしてクラブシーンでも新しいヘヴィネスの地殻変動が起こり始めている。ミニマルなエレクトロサウンドで注目を集めているバンド・gato。音源こそミニマルでメロウなプロダクションだがこれがLIVEになると一変、アブストラクトなVJの映像と共にサウンドはラウドにビルドアップされ、新しいヘヴィネスの形がそこに浮き上がってくる。この「miss u」という曲はそれが顕著で、ドロップパートでビートに合わせてメンバーを含めヘッドバンギングが巻き起こる様はまさにヘヴィーミュージック的だ。そして同じくVJを使ったパフォーマンスを行うバンド・HOPIのLIVEも新しい形のヘヴィネスを提示していると言える。トライバルなビートやボーカルアプローチ、そしてアブストラクトな映像が巨大な質量と化して空間を支配し押し寄せてくるあの感覚は、純粋に音圧が大きいだけのLIVEとはまた違った新しい形のヘヴィネスと言えるのではないだろうか。

gatoやHopi、rib hiat motel等VJを取り入れた空間演出によって音圧の体感をブーストさせ空間全体が押し寄せてくるような、言わば「空間圧」としてのヘヴィネスを体現するバンド達。彼らはこれからのヘヴィーミュージックの動向を見る上で重要な新たな鍵にになるかもしれない。

また主にクラブシーンを中心に活動をしているトラックメイカー/プロデューサー/ギタリスト・Shin Sakiuraの新曲「Everlasting」もギターのフレーズが印象的なPolyphiaやChon等プログレインスト勢にも共振するナンバーだ。Earthists.が既存曲「Perge Me」をアーバンにリミックスした「Purge Me – Jazz Groove Remix」もクラブのイベントでスピンされていてもおなしくないモダンな仕上がりになっている。

ラップシーンやクラブシーンを起点にして顕在化してきている日本の新しいヘヴィネスの形はまさに新しいヘヴィーミュージックの地殻変動。これから更に面白くなるであろうこのムーブメントに是非注目していきたい。

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