DiverCore vol.1

DiverCore vol.1

ヘヴィーミュージックに特化したプレイリスト『DiverCore』(読み方 : ダイバーコア)をSpotify・Apple Musicにてローンチした。こちらのプレイリストでは国内外問わず“今聴くべきヘヴィーミュージック”をプレイリストというフォーマットを使ってキュレーションしていこうと思う。更新は毎月1日、曲数は30曲を予定。更にはプレイリストと同時にプレイリストを解説するコラムもお届けする。
(※今回は2018〜2019年上半期にフォーカス、約70曲をキュレーションした。)

さて、プレイリストのタイトルになっている『DiverCore』とは多様性を表すDiversityとMeralcoreやPostHardcoreにも使われるCoreを掛け合わせた造語になっている。今更多様性と言わずとも元々ヘヴィーミュージックとElectroやHip Hop等のブラックミュージックを取り入れる事で多様に進化してきた音楽と言える。しかしBRING ME THE HORIZONが『That’s The Sporit』をリリースした2015年以降、ある意味でヘヴィネスから解き放たれたヘヴィーミュージックは世界的な地殻変動を起こし、更なる多様な進化をしているように思える。

例えば、叙情をキュレーションするサブミッションメディアDreamboundの台頭と共に起こった叙情ムーブメントや、ISSUESの1stアルバム『Issues』に端を発するNu-Metalcoreブーム、BRING ME THE HORIZONが『That’s The Sporit』で提示したポスト・ヘヴィネスは、それまでの重く激しくを追求し飽和状態にあったモダン・メタルコアの文脈を解体し、ソングライティングやアレンジメントへの再評価、スクリーモ・リバイバルやポスト・メタルコアの潮流を生み出した。

そして2019年、2015年から巻き起こった新たなムーブメントが更に複雑に絡み合い、一重にカテゴライズ出来ないサウンドが日々生み出されている。場合によってはヘヴィーでもラウドでもない新しい形のヘヴィーミュージック、それを改めて多様化という言葉を借りて、このプレイリストでは“DiverCore”と銘打っていきたいと思う。

ではプレイリストの解説に入っていこう。今回は初回の更新という事で2018年の流れを汲みつつ2019年上半期の総まとめ的なプレイリストで60曲をセレクトしてみた。それに伴いコラム自体もかなりの長さなのでお時間がある人だけ目を通してほしい。

文・編集 / ynott


今回ピックアップアーティストとして選出させて貰ったのが東京を拠点に活動するプログレッシブメタルコアバンド・Earthists.だ。

彼らの最新曲「Purge Me」はプログレッシブメタルコアをベースにクリーンパートを大幅に増量。更にはYuto(Gt)のソロプロジェクトSkyLogicでの活動をフィードバックした緻密なアレンジメントを施されたポストDjent以降の流れを汲みつつ完全にオリジナルなサウンドを産み出した。

多様化が進む2019年のDiverCoreを象徴するナンバーと言って過言ではないと思う。

また彼らに追随するように頭角を現している新鋭も多数。トラディショナルなメタルコアやポストハードコアのマナーにオンタイムなアレンジメントを取り入れヘヴィネスを更新する東京の新鋭4ピース・From the Abyssや、北海道を拠点に活動する18歳のVo.率いる話題の4ピース・CVTLE、MaeやWalking Ashland等を筆頭としたピアノエモの意匠を汲みつつBMTH以降のポスト・ヘヴィネス文脈を取り入れ新時代のエモを提唱するThe Fetchなど、独自のサウンドを体現する新世代バンドの台頭も目覚ましい。

また、日本においてはヘヴィーミュージックシーンの外からもヘヴィネスの定義を更新するアクトが多数台頭。

ポエトリーラップを操りながらも叙情ハードコアの激情性を併せ持つフィメールアクト・春ねむり(昨今は海外での活躍も目覚ましい)や、
ギターロック meets ポエトリーリーディングという独自のスタイルを体現しながらもDjent/プログレッシブメタルコアやTrapのマナーを貪欲に取り入れる東京の3ピースétéはバンドサウンドの定義を拡張したThe 1975の最新アルバム「ネット上の人間関係についての簡単な調査」のアティチュードにも共振してると言える。

他にもメタル、パンク、スクリーモ、ゴシックなどをクロスオーバーした唯一無二なスタイルにTrapやEDM、USポップスのマナーを融合させるアイドルユニット・ゆくえしれずつれづれ、Djentやポストハードコアの文法とKawaii Future Bassを融合し、更にはCY8ERのましろやichikaとの異色コラボも実現させるField of Forestの2人によるユニットNeko Hacker等、ヘヴィーミュージックはシーンの壁を越えてギターロックシーンやアイドルシーン、クラブシーン等我々が計り知れない所まで拡張を続けている。

海外のヘヴィーミュージックシーンの多様化も2019年に入ってからは更に顕著。

ポスト・メタルコアや叙情Djentや叙情ポストハードコア等、BMTHやDreamboud以降に起きた地殻変動の更なる活性化は勿論、Trap以降のマナーとソングライティングを自然体で乗りこなす新鋭・Five AMや、おそらくシーン初?の三連符スクリームを取り入れたHappy Hour、ALAZKAのTobiasを客演に迎えた楽曲を発表し、アジア圏内とアジア圏外のシーンの横断を実現した香港の5ピース・Season For Change等、昨今のポップカルチャーやポップミュージックにインスパイアされた次世代のバンドも続々と台頭している。

中国のポストハードコアLife Awaitsの躍進にも見て取れるが、DreamboundやSpaceuntravel等のサブミッションメディアの活性化によってキュレーションに国境がほとんど無くなった2019年以降のシーンにはアジア圏からも独自のカラーを持った面白いバンドが続々と登場するに違いない。BTSや88risingの躍進によって世界的にプレゼンスを強めている昨今のアジア圏の音楽シーン、その流れは確実にヘヴィーミュージックシーンにも影響を与えている。

 

また昨今のポップミュージックの動きに共振したアティテュードとして特筆すべきはRemix音源のリリースだろう。今年に入ってはNormandieやCaptive、Good Tigerが既存曲のRemixをリリース、日本ではCrystal Lake、abstractsが積極的に取り組んでいる。これまでもAcoustic Ver.やRe-Imaginedと銘打ってヘヴィネスを解体する試みは行われてきたが、Remixのリリースという文脈は、特に最近のポップミュージックシーンでも活発的に行われており、そのムーブメントに共振していると考えていいだろう。

また、日本の新鋭プロデューサー/DJのBUNNYがex-Hopes Die LastのVo.Beckoを客演に迎えた楽曲をリリースした事や、I See StarsのVo.Devin OliverによるエレクトロのソロプロジェクトshYbeastの始動、更には世界的なDJ/プロデューサーのMashmelloがA DAY TO REMENBERとのコラボ曲を発表する等、ヘヴィーミュージックがEDMやダンスミュージックという領域を通じてメインストリームとコネクトし始めている現象も非常に興味深い。かつてはヘヴィーミュージックシーンからBreathe Carolinaがほぼ単独でダンスミュージックシーンに巣立っていったが、彼ら以降途絶えていたヘヴィーミュージックとダンスミュージックのミッシングリンクが2019年の今ようやく繋がろうとしているではないだろうか。

更にPost MaloneやXXXtentachionを筆頭に2018年のヒットチャートを席巻したEmo Rapとの接近も非常に面白い。Hopeless Recordsと契約したエモラッパーdying in designerや、名門Fueled by Ramenのnothing,nowhere.、Blink-182のTravisをプロデューサーに迎えたEPを発表したLil Aaron、UKのポストハードコアバンド・CrooksのVoのエモラップのソロプロジェクト・Sulli等、Emoという本質的な部分、ある意味土中で根っこが繋がっていた文脈がようやく芽として地上に姿を現しつつある。

さて語るべき事はこれに尽きない。新作でポップにに振り切りヘヴィーミュージックだけではなくポップスの拡張すらもやってのけたBring Me The Horion、楽曲がHONDAのCMに抜擢され一気にメインストリームに駆け上ったSurvive Said The Prophetなど、ヘヴィーミュージックをポップス的なアプローチで拡張するアクトが活躍している。

その反面、IssuesやSleeping With Sirensなどは新曲でヘヴィネスの回帰を思わせる楽曲を発表し、ヘヴィーサイドとポップサイドの二極化の動きも見られる。更に年内にはIssuesのアルバムやポストBMTH最有力のBad Omensのリリースも控えている。また2020年以降はいよいよBillie EIlish以降のヘヴィーミュージックアクトが台頭してくるのは間違いないだろう。メインストリームのポップミュージックに共振して更なる多様化と進化を遂げるであろうヘヴィーミュージック。これからがますます楽しみだ。 

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