DiverCore vol.2

DiverCore vol.2

ヘヴィーミュージックに特化したプレイリスト『DiverCore』(読み方 : ダイバーコア)の第二弾、【DiverCore vol.2】をSpotifyとApple Musicにて公開した。このプレイリストは国内外問わず“今聴くべきヘヴィーミュージック”をプレイリストというフォーマットを使ってキュレーションするもので、今回は約40曲をセレクト。

文・編集 / ynott(https://twitter.com/ynott1986)


ストリーミングによって繋がる日本のヘヴィーミュージック

先日、我らがラスベガスことFear, and Loathing in Las Vegasの既存楽曲がストリーミングサービスにて配信開始した(一部を除く)。これまで既に最新シングルなどの配信は行われてきたが過去のアルバム作品を含め、彼らの既存曲の殆どを開放するのは今回が初。日本のヘヴィーミュージックシーンにとって特大のエポックであった彼らの1stアルバム『Dance & Scream』に関しては未だにタワーレコード限定CDでの販売なのが些か残念ではあるが、間違いなくこの解禁は現行のヘヴィーミュージックシーンにとっても“過去と現在を繋ぐ”といった意味でも、大きな一歩に成り得ると思っている。

とはいえ日本におけるヘヴィーミュージックシーンの最大の躍進期であった(ラウドロック全盛であった)ゼロ年代後期からテン年代初期おいて、シーンを牽引していたバンド達の既存の音源が音楽ストリーミングサービスにて配信されていない事例は未だにかなり目立つ。これに関しては、例えば音源自体が自主制作でバンド自体が解散していたり、当時の音源をリリースしたレーベルが無くなってしまっていたりと、原盤権の所在が不明になっている、もしくは放置されている?パターンというのがあると思われるので今後その全てが解決され音源がストリーミングで配信されるという事はおそらく難しい。しかし私個人としては2015年以前と以降である意味で文脈が途切れてしまっている現在のシーンを再び繋ぎ直せるのはストリーミングサービスであると思っている。

文・編集 / ynott(https://twitter.com/ynott1986)


さて前置きが長くなったが今回もプレイリストを解説していこう。

国内勢としてはROACH、coldrain、ゆくえしれずつれづれの新譜が目覚ましい。ROACHの新作は彼らの最大の武器である沖縄由来のソングライティングを踏襲しながらもDjent/プログレッシブメタルコア由来の強靭なバッキングでビルドアップしモダンな音像に仕上げた1枚。

そしてニューアルバムのリリースを控えているcoldrainの新曲はオーセンティックなソングライティングとヘヴィネスに回帰しながらもTrap以降のフロウを取り入れ現行のポップミュージックに共振した1曲になっている。

新体制で初のリリースとなったフィメールユニット・ゆくえしれずつれづれの新曲「ssixth」はまさにゼロ年代のポストハードコアと言える原点回帰の1曲に仕上がっている。

またAlternationsやEPHEMERA、CrowsAliveなど、Earthists.やSable Hills、FOAD等をはじめとした現行のシーンの最前線を走る若手バンド陣を追随する新鋭のバンド勢の台頭も目覚ましい。

 次のフェーズへと進み始めたNu-MetalとRapCore

昨今のヘヴィーミュージックシーンにおける最大ムーブメントである“叙情ブーム”に対をなすムーブメントは“Nu-Metalリバイバル”だろう。Issuesの1st『Issues』で火が付き、Nu-Metalcoreという新しいジャンルまで生み出したこのムーブメントは、2019年の今また新たな局面を迎えようとしている。これは現段階では私の完全な予想であって、まだまだ点と点が点在している状態で線にはなっていないのだが、Nu-Metalcoreの台頭から加速した“Nu-Metalリバイバル”は、“叙情ブーム”への反動、もしくはBMTH以降の“ポスト・ヘヴィネスへの揺り戻し”、つまりはここ数年の「静のムーブメント」に対する「動のムーブメント」として、大きな波となって次なるタームへと移ろうとしているように感じる。


例えばNu-Metalcoreを通過して更にドープに進化したAlpha WolfやAttila新作、例えばインダストリアルなデジタルサウンドでより強靭にビルドアップされたNorthlaneの新曲達、例えば現在世界中を席巻している(ある意味での)新人バンド・FEVER333の大躍進、更にはロックだけではなくポップの定義をも拡張したBRING ME THE HORIZONの最新作『amo』、このアルバムから最初に公開された「MANTRA」が明らかにNu-Metalを意識したフィールをまとった1曲だった事や、このタイミングでNu-MetalシーンのレジェンドであるKORNとSlipknotがニューアルバムを持ってシーンにカムバックする事も決して偶然ではないだろう。


大きな枠組みで捉えればNu-Metalリバイバルが現在も続いてるだけとも考えられる。そもそもヘヴィーミュージックはこれまでもラップミュージックと深い関わりの中で進化してきたと言える。しかしながら2020年という新たなディケイドを目前にし、新たなヘヴィーミュージックの潮流というものが今まさに生まれてきているのではないだろうか。


私がそれをおぼろげながら確信しているのはここ数か月で急速に新たな潮流を形成しつつある “ポスト・ラップコア”の台頭だ。Five AM、Picturesque、Nevertel等がTrap、Emo Rap以降のソングライティング&サウンドプロダクションとポストハードコアのマナーが完全に溶け合った新曲をリリースしたのが象徴的で、私はこれを便宜上ラップコアの新たな流れとして“ポスト・ラップコア”と呼んでいる。これまでの“Trap以降のビートやフロウを取り入れる”という段階から、確実に次のフェーズに進んだこの流れはTrap以降のポップミュージックにインスパイアされた新鋭バンドが続々と台頭してくるであろう2019年の下半期、もしくは2020年以降の新たなディケイドの大きな潮流になるのはまず間違いないだろう。


ソロプロジェクトで深化を辿るシーンのレジェンド達

以前から顕著ではあったがここ数年で改めて顕在化してきているのはゼロ年代後期からテン年代初期に掛けてシーンを席巻してきたレジェンド級バンドのボーカリスト達によるソロプロジェクトだ。2019年にリリースされた作品を中心に紹介していこう。

Issuesのボーカル・Tyler Carterがリリースした待望のソロアルバム『Moonchid』は、ex-Issuesのプロデューサーlophiile(Tyler Acord)を軸に据えながら新鋭トラックメイカーMedasinや名匠Brian Paddock等をプロデューサーに迎え、またソングライティング面では気鋭のプロデューサー/ソングライターErik Ronとタッグを組み、単なるR&Bの枠には収まりきらない多彩なプロダクションとTylerの歌声を最大県に生かすグッドメロディーが詰まったポップアルバムに仕上がっている。

昨年自身が立ち上げたバンド・SLAVESを解雇された、シーン最強のレジェンドボーカリスト・Jonny Craigが約1年半の活動休止期間を経てソロアーティストとしてカムバック。ソングライター/プロデューサーにErik Ronを迎え、Trap以降のポップミュージックと共振したオーセンティックなR&Bナンバー「Block out to Noise」をリリースした。

Dance Gavin DanceやA Lot Like Birds等数多くのバンドをボーカリストとして渡り歩き現在はRoyal CodaのVo.を務めるKurt Travis、以前からコンスタントにソロ作品を上梓してきた彼の最新アルバム『There’s a Place I Want to Take You』は、癖のあるソングライティングを残しながらもオーセンティックかつシンプルなプロダクションで気持ちの良い風が吹き抜ける肩の力の抜けたまさにソロ作品とも呼べる一枚。

Asking AlexandriaにカムバックしたDanny Worsnopのソロ2ndアルバム『Shades of Blue』はRob CrosbyやAshely Macbydeをはじめ数多くのカントリーシンガーをソングライターに迎え入れ制作された1枚で、彼のルーツミュージックでもあるカントリーミュージックにインスパイアされた1stアルバム『The Long Road Home』を意匠達の手を借りて更に深化させた内容になっている。

自らのルーツを辿りながらもメインストリームに共振するサウンドを求めるJonnyやTyler、はたまた自らのルーツを更にトラディショナルな方向に深化させるKurtとDanny、彼らのスタンスは多様化の時代にふさわしく様々だ。個人的に非常に興味深いのは、彼らがそれぞれ異なるルーツを辿ってきながらも、ヘヴィーミュージックシーンという同じ土俵でボーカリストとして活躍している所だ。

更に彼らのこのソロ活動は明らかにバンドの作品にもフィードバックされ、バンドの進化にも繋がっているように思える。興味があれば是非彼らの作品にも耳を傾けて欲しい。そしてルーツを辿る事が現行のヘヴィーミュージックを更に多様に進化させるカギに成り得るかもしれない。


関連 : DiverCore vol.1
https://toppamedia.com/playlist-2019-7-divercore-vol-1/

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