取材・文・編集 / 宮久保仁貴
写真 / TOPPA!!編集部(Phantom Excaliver)
Masaya Fukuda(abstracts , Sable Hills) ,
Satoshi ”ACE” Kudo(Thousand Eyes)
Hiroya Brian Nakano(Survive Said The Prophet)
TOPPA!!編集部(NOCTURNAL BLOODLUST) (※出演順)
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2017年11月5日、法政大学のライブ企画団体、YADORANG 主催の音楽イベント” Burning Down Helios”が法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー ヘリオス特設ステージにて行われた。
YADORANGについて説明すると、2011年に法政大学の学生有志によって立ち上がったライブ企画団体であり、今まで開催したイベントはラウドやメタル・パンクなどを中心に、勢いのある数多のバンド達が出演している。昨今、この手のジャンルにおいて、YADORANGのイベントに出演出来るということは、一種の登竜門、かつステータスでもあるのだ。
なお、主催・運営・制作に至るまで、全て学生達の手によって行われており、今も昔も、このDIY精神は変わる事なく受け継がれている。
また、毎年学園祭シーズンになると、「Helios」シリーズの大規模なフェスティバルが開催されている。
今年は「Burning Down Helios」と題して、Phantom Excaliver、abstracts、Sable Hills、Thousand Eyes、Survive Said The Prophet、NOCTURNAL BLOODLUSTと、ラウドでヘヴィな怪物達が法政大学に集結、ライブを繰り広げた。そして、オーディエンスの盛り上がりもまた、例年より更にパワーアップし、「Burning Down Helios」は大盛況の中、閉幕した。
今回、TOPPA!! 編集部は「Burning Down Helios」に出演した全バンドのライブレポートをお届けする。
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【Phantom Excaliver】 Photo by TOPPA!!編集部
Burning Down Heliosのトップバッターを務めたのは、Phantom Excaliver。
今年12月15日(金)に、マイナビBLITZ赤坂にて、自身最大規模のワンマンライブを控え、その勢いは止められない彼らだが、この日のライブも200%熱気を込めたアツいライブを繰り広げてくれた。
SE「大飛翔GOLDEN EAGLE」と共に、颯爽とメンバーが登場、「法政!俺達のメタル魂、お前達に聴かせるぜ!声聴かせてくれ!」とKacchang(Vo)がオーディエンスを煽ると、場内は大歓声に包まれた。本日の1曲目は「METAL HEART」、シンガロングパートでは、数多のオーディエンスがメロイックサインを高らかに掲げ、Kacchangの掛け声に応じて、掛け合いを行なっていた。
続けて、「お前達、Xジャンプは出来るか?見してくれ?!」と叫び、彼らのライブの定番曲「Remember X」がプレイされた。Kacchangが「今日一番の、最高の笑顔を見せてくれ!」と言い、サビではステージもオーディエンスも一体となってXジャンプが繰り広げられた。
MCでは、Thomas(Dr)が、「実は、俺は法政大学出身で、学生時代音楽企画倶楽部というメタルサークルに入っていました。母校に帰ってきてこんな大舞台でヘヴィメタルをプレイさせてもらえる事に感謝です!マザッす!」と感謝の言葉を述べると、オーディエンスから拍手の嵐が舞い起こった。
場内も暖まった所で、続けて「Destiny ~人生に捧げたHeavy Metal~」がプレイされた。途中、とめどなく流れる美麗なMatsuのギターソロがオーディエンスの耳を満たしていった。「初めてヘヴィメタルを聴いた時の感覚は忘れていない……!俺達はヘヴィメタルを愛してる!」とKacchangの語りパートに対して、オーディエンスもより大きな歓声で応えた。ラストは、彼らの代名詞と言っても過言ではない「MOTHER EARTH」をプレイし、彼らの”全力のありがとう”の気持ちを込めたライブが繰り広げられ、熱狂のうちにライブの幕を下ろした。
-Set List-
1.METAL HEART
2.Remember X
- Destiny ~人生に捧げたHeavy Metal~
4.MOTHER EARTH
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【abstracts】 Photo by Masaya Fukuda
Phantom Excaliverに続き、本日の二番手はabstracts。
国内Djent/ポストハードコアシーンにて、名実共に抜きん出ている彼ら。今回のライブにおいても、激しいステージング・タイトでテクニカルなプレイをしつつも、どこかその中に一輪のエモさを感じさせてくれた。
いきなりキラーチューン「City Lights」からライブが始まり、SATOKEN(Vo)が「さぁ始めようか法政?!」と力強くタフな声でリスナーを煽った。サビでは、SATOKENがビターなテイストを感じるクリーンパートを歌い上げ、そこにLIN(Gt)のジャジーな極上のギターソロが絡み合う。これぞ日本の次世代のポストハードコア筆頭格と言うべきか、圧倒的な完成度にオーディエンスの視線はステージに釘付けになっていた。
続けて「Slow Dancer」がされた。イントロではDjent/Chug特有の機械的なリフワークが展開されつつも、R&Bの影響を感じさせる小洒落たギターフレーズが合間って、どこか横ノリで、ムーディーな雰囲気を漂わせていた。
「騒げ!声聞かせてくれ!」とSATOKENが短めのMCを終えると、間髪入れず、バンドの代表曲「Mirror」がプレイされた。複雑なフレーズをいとも軽やかに弾き上げるLIN、タフなシャウトとビターなクリーンで歌い上げるSATOKENの歌唱、そして、バックで一切ブレる事なく正確無比にリズムを刻むMIKI(Ba)とKAI(Dr)のスキルフルなプレイは特筆すべき事項だろう。
最後に彼らは「Wind」を轟音でプレイ、オーディエンスの拍手喝采が鳴り止まない中、次のSable Hillsにバトンを渡した。
-Set List-
- City Lights
- Slow Dancer
- Mirror
- Wind
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【Sable Hills】 Photo by Masaya Fukuda
Burning Down Heliosも早いもので、もう中盤戦、三番目に登場したのはSable Hillsだ。
先月Crystal Lake主催のTRUE NORTH festivalにも出演し、今日本の若手メタルコアシーンで飛ぶ鳥を落とす勢いの彼ら。Burning Down Heliosでは、唯一のトゥルーメタルコアバンドとして、厳格なステージングでその存在感をオーディエンスに知らしめた。
ハードコア特有のイントロフレーズをバンドが演奏し、「俺たちと一緒にお祭り騒ぎしようぜ!」とTakuya(Vo)が叫び、のっけから客中に突入、これぞメタルコアのライブと言わんばかりに、ブチ切れたステージングを見せてくれた。この日、彼らが一番初めに持ってきた楽曲は「The Chose One (Feat. Toshiki of Mirrors)」。シンガロングパートに入ると、オーディエンスがTakuyaのマイクめがけて、一斉に前方へ群がった。途中、Mirrors Toshiki(Vo)の客演が入り、圧倒的なLOWガテラルボイスが会場の空気を制圧した。同時に巨大なモッシュピットが自然に発生し、オーディエンスのウィンドミルが繰り広げられた。
続いては、「Ghosts (Feat. SATOKEN of abstracts)」がプレイされ、Takuyaが「揺らせ!サークルピット!」とオーディエンスを煽ると、大きなサークルモッシュが形成された。続いてabstracts SATOKEN(Vo)の客演が続き、Takuyaとの掛け合いに、オーディエンスの熱気は自然に高まっていく。
「ここの会場はHeliosって言うんだけどさ、文字どおりBurning Down Heliosしようぜ!」とTakuyaが短いMCを挟み、12月発売予定の『Elements EP』から新曲「Downfall」がプレイされた。TakuyaとKodai(Ba)のシャウトの掛け合いの後、これぞThis is Metalcoreと言わんべく、極悪なブレイクダウンで場内をSable Hills一色に染め上げていく。
ラストは彼らの活動初期からの名曲「Colorless」を演奏、曲中のRikuto(Gt)の泣きのギターメロディはオーディエンスの琴線を大いに震わせ、場内を見渡す限り、彼らは高らかにメロイックサインを掲げていた。ハードコア由来のアグレッシブなステージングに、メタル由来のメロディックなエッセンス、この両方を兼ね備えたトゥルーなバンドがSable Hillsなのだ。
そして、圧倒的興奮の渦に包まれつつ、Sable Hillsはライブの幕を下ろした。
-Set List-
- Intro
- The Chosen One (Feat. Toshiki of Mirrors)
- Ghosts (Feat. SATOKEN of abstracts)
- Downfall
- Colorless
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【Thousand Eyes】Photo by Satoshi ”ACE” Kudo
Burning Down Heliosも後半戦に差し掛かる中、四番目に登場したのはTHOUSAND EYESだ。
バンド結成5周年を迎え、日本のメロディックデスメタル・デスラッシュシーンの頂点に君臨する彼らだが、この日も立ちはだかるもの全てを薙ぎ倒すかの如き速さとエクストリームさでオーディエンスの関心を掻っ攫って行った。
バンドは一曲目から、彼らの代名詞「Bloody Empire」を惜しげも無く披露し、オーディエンスの興奮を一気に最高潮まで押し上げた。KOUTA(Gt)とTORU (Gt)の慟哭の泣きのギターに、それを支えるAKIRA(Ba) の威風堂々としたベースプレイとFUMIYA(Dr)の爆発的でありつつも細やかな業が光るドラミング、そしてDOUGEN(Vo)の重さと鋭さを兼ね備えた鉈の様なスクリーム。この5人の達人が集結した結果、暴虐的でありつつも、美しい”THOUSAND EYES”という怪物が生み出されたのは必然だろう。続けて「Last Rebellion」をプレイ、FUMIYAの暴れ馬のようなドラムに、サークルピットはより大きく展開された。
その中で、KOUTAとTORUの流麗なギターソロも重なり合い、これがメロディックデスラッシュだ、と言わんばかりの音の洪水がオーディエンスを包み込んだ。
DOUGENが、「HEY!今日はイカした法政大学YADORANGの企画に呼ばれて、お前らと一緒にメタルしに来ました!よろしくお願いします!」と芯の通った大きな声でMCをすると、オーディエンスもまた倍以上の歓声で応えた。続けて「Mirror Knight」が演奏され、KOUTAとTORUのツインリードギターのメロディが、オーディエンスの耳に染み付いてくる。ここで特筆すべきは、両ギターがソロを弾いている際も、音の薄さは全く感じる事はなかった点だ。リズム隊のAKIRAとFUMIYAの阿吽の呼吸によるタイトなリズム、そして長年の経験からなる一音一音の深みが、そう感じさせないのだろう。
「こんな最高なお前達に出会えたから、俺たちも何かしらのプレゼントをしなきゃいけないと思ってるんだよ。次演奏する曲は、いつリリースになるかはわからんが、将来リリースされる3rdアルバムのタイトルトラックを予定してる曲だ!」と、DOUGENがオーディエンスの期待を煽るMCを挟み、未音源化の新曲「Day Of Salvation」がプレイされた。FUMIYAのブラストビートが光り、サークルピットの速度はどんどん加速していく。そして、最後に名曲「One Thousand Eyes」を披露した。サビの歌詞「Burn The Sky !」ではオーディエンス全体がメロイックサインを掲げ、場内は完全にTHOUSAND EYES色に染め上がった。
-Set List-
1.Bloody Empire
2.Last Rebellion
3.Mirror Knight
4.Day Of Salvation
5.One Thousand Eyes
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【Survive Said The Prophet】Photo by Hiroya Brian Nakano
いよいよ本日のライブも終盤戦。五番目に登場したのはSurvive Said The Prophet、通称「サバプロ」だ。
今年3rdアルバム『WABI SABI』をリリース、全国ツアーを開催し、先日10月に恵比寿リキッドルームにて開催したツアーファイナルも大盛況に終え、次世代ロックシーンを牽引する彼ら。電話の通話音がSEとして鳴り響き、ステージにメンバーが颯爽と登場、「Network System」をプレイした。Yosh(Vo)のエモーショナルな歌唱にYudai(Ba)のコーラスが絡み合い、オーディエンスの琴線を大きく揺さぶった。
Yoshが、「一緒にメチャクチャ運動してみませんか?」とオーディエンスを煽り、続けてサビの圧倒的爽快感が特徴的な「Fool’s gold」、を演奏した。「法政、声聴かせてくれよ!」とYoshが呼びかけ、「Spectrum」のメロディーを歌うと、会場全体から倍以上の声となって、反響が返って来た。そして、「I don’t care」では、Yoshの歌声が会場全体に浸透し、オーディエンスは皆、透き通りつつも芯のある彼の美声に聴き惚れていた。
MCでは、「大学に行って何か目的を見つけられる人も多い、そうじゃない人もいると思いますが、どんな道に進んでも後悔しない生き方をしてください!」と、「When I」に繋げた。これでツカミはバッチリ、YoshのMCに一致団結したオーディエンスの手拍子が場内のあらゆる方向から鳴り響いた。Yoshは等身大のエモーショナルな歌詞をしっとりと歌い上げ、ギター・ベース陣のコーラスワークがそれをしっかりと支えていた。彼らのパフォーマンスに、新たなロックの在り方を見た。
インスト曲「FIXED」で雰囲気が変わったところに、Yoshが「皆で踊れる曲持って来ました!」と言い、「Tierra」がスタートした。ビターでムーディーな雰囲気を漂わせるYoshの歌唱にオーディエンスは更に彼らのライブに引き込まれていく。そして、彼らはラストに「Follow」をプレイした。引き続きYoshはしっとりと歌い上げつつ、その表情はオーディエンスに何かを訴えかける様な、強い意志を持った表情をしていた。曲中のブレイクの後、Yoshの歌に更に力強さが増し、爆発的なエモさが場内を包み込んだ。心地良い余韻を残しつつ、彼らのライブは幕を閉じた。
-Set List-
1.Network System
2.Fool’s gold
3.Spectrum
4.I don’t care
5.When I
6.FIXED
7.Tierra
8.Follow
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【NOCTURNAL BLOODLUST】 Photo by TOPPA!!編集部
本日最後のアクトはNOCTURNAL BLOODLUST、通称「ノクブラ」だ。
数々のシーンから注目を浴び、エクストリームミュージックの異端児である彼らだが、これまで学園祭の出演経験は無く、Burning Down Heliosがバンド史上初の学園祭出演日となった。この日、機材トラブルに見舞われつつも、そんな些細な事を全て吹っ飛ばしてくれる様な、痛快なライブを見せてくれた。
「待たせたな!暴れるぞ!」と尋(Vo)の煽りと共に、「Punch me if you can」がスタートした。圧倒的な音圧と壮絶なライブパフォーマンスを叩きつけられ、待ち侘びていた多数のオーディエンスがここぞと言わんばかりにブレイクダウンパートでウィンドミルを放ち、辺りは一瞬で戦場と化した。一方で、Cazqui(Gt)は自由奔放なステージングをしつつも、テクニカルかつ情熱の込もったエモーショナルなギタープレイを披露した。ここに、メタル界次世代のギターヒーロー到来を予感させた。尋の「お前ら二手に別れろ!行けるかい?!」と熱血漢なMCに続き、「銃創」がプレイされた。この日一番大きなWall Of Deathが展開され、場内の様子はよりカオスさを極めて行った。「T.Y.R.A.N.T」では尋がサビパートで客席に向かってマイクを向けると、前方も後方もオーディエンスの大合唱で反響が返って来た。
「じゃあ後半戦行きましょうか?」と尋が短めのMCを入れ、彼らの楽曲の中でもエクストリームに振り切った初期の名曲「Dysphoric Torment」が始まった。曲中の落としに落としまくったブレイクダウンパート、これを聞いてオーディエンスの身体が動かないはずがない。モッシュピットの中で、ウィンドミルなど、各人思い思いの華麗なMOVEが展開されつつ、前方ではオーディエンスのより大きなヘドバンが見られた。続けて、ノクブラ流パーティーソング「V.I.P」がスタート、場内はアゲアゲなムードに包まれた。中間部のシャッフルパートではヘドバンありの、拳ありの、ツーステップありの、それぞれのオーディエンスならではの楽しみ方が展開されていた。このファン層の幅の広さも、ノクブラの良さと言って過言ではないだろう。
尋の漢気溢れるMCでオーディエンスを一喝すると、瞬時に彼らは二手に分かれた。それと同時に「Venom」がスタート、本日二度目のWall Of Deathが繰り広げられ、よりモッシュピットの大きさは増していった。
ラストの「Malice Against」では尋が客中に突入し、タフガイなステージングを見せた。全てを飲み込むかの様な楽曲の勢いに、彼ら自身の鬼気迫ったステージングにオーディエンスも200%の勢いで応えていた。イントロの”RPGの究極魔法の爆発”を思わせる様なNatsu(Dr)のブラストビートに誘発され、ダイブするオーディエンスも多数発生し、この日一番の地獄絵図を見せてくれた。熱気と大歓声に包まれる中、彼らのライブは幕を閉じ、Burning Down Heliosもこれにて閉幕した。
-Set List-
1.Punch me if you can
2.銃創
3.T.Y.R.A.N.T
4.Dysphoric Torment
5.V.I.P.
6.VENOM
7.Malice Against
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